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映像プロデューサー
辻本 守

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「炎上」が起きやすくなっている理由

こんにちは。映像プロデューサー/映像プランナーの辻本と申します。手がけている映像の種類としては、ブランディングムービーや企業PRが多く、そのほとんどがソーシャルメディアなどをプラットフォームにしたデジタル上の出稿案件です。本ブログでは、デジタル案件を手がけて見えてきた事を通じて、映像に求められているモノ・提供できるコトを、現場目線でお伝えできればと思います。

昨年、『「炎上」CMから学ぶ発信のトーン&マナー術!』というセミナーの講師を務めさせていただきました。このセミナーでは、近年に炎上したCMを基に、炎上した理由を考察し、CMや動画、デジタルコンテンツで炎上しないための考え方をお伝えしました。

『「炎上」CMから学ぶ発信のトーン&マナー術!』セミナー

『「炎上」CMから学ぶ発信のトーン&マナー術!』セミナー

なぜ私が「炎上CMを語れるのか」ですが、私はTVCM/WEBCMを制作する映像制作プロダクションの制作進行業務を経験後、マーケティングエージェンシーでデジタルメディアプランナーとして従事していました。映像がどうやって作られていくのかを「企画(上流)」と「制作(下流)」の両方の現場で経験し、多くの炎上CMを見てきた事がお話しできる理由となります。

そこから見えた「炎上」とは、“本来のメッセージとは異なる形で受け取られ盛り上がってしまう現象”だということ。メッセージが適切に受け取られず、誤解を与えてしまっているのが原因です。

バズと炎上の現象差

バズと炎上の現象差

その背景としてあるのが、CM、動画を含むデジタルコンテンツの増加だと思っています。映像が与える情報量は、WEBページに換算すると膨大なものになります。情報の複雑化、高度化が進む中で、コストパフォーマンス面から見ても今日の映像市場の隆盛は当然と言えます。さらに、通信速度の高速化、デバイスの発達、動画編集の簡便化とフリー素材の拡充、デジタル広告の種類の多様化といった事をきっかけに、これまで映像を手がけて来られなかった方々が大勢、動画市場に新規参入されました。こうして多くの新規参入者が増えた結果、映像業界にスキルやノウハウのムラが出てきてしまい、「炎上」という名のハレーションが起こったのは必然だったかもしれません。

「コンセプトメイキング」の大切さ

では、制作者にどんなスキルやノウハウがあればよいのでしょうか?もっとも重要なのが「想定したターゲットに対して、適切にメッセージを届ける」という事です。

こう書くと当たり前の事のようですが、これがなかなか難しいのです。何の意図もなくただ面白さに特化した内容であったり、とっ掛かりを与えるだけの出オチ的な内容であったり、ユーザーの気持ちを瞬間的に揺さぶる事だけに特化してしまい、結果的にユーザーに誤解を与えてしまっていることも多々あります。そうならないために、「なぜ映像を作るのか、誰に映像を見せたいのか、どう感じてもらいたいのか」その基本軸をしっかり作る事、つまり「コンセプトメイキング」が必要なわけで、それが私たち映像制作者のスタート地点でもあるのです。

「コンセプトメイキング」作業に入るに当たっては、狙っていくターゲットを明確にしなくてはなりません。「ながら視聴」できるTVCMや大型ビジョンとは違い、デジタル上の映像は時間を拘束して見て貰うコンテンツになるので、届けたい相手のイメージ精査がより必要になってきます。

そのとき、データが蓄積されていてある程度課題が分かっている既存顧客であればいいのですが、これから狙っていきたい新規顧客の場合には、仮説に基づいた新しい戦略の中でようやくターゲット像が見えてきます。そこが明確になり、私たち制作サイドも共有させてもらえる事によって、誰に何を届けるのかが鮮明になり、クライアントと同じゴールを目指せるようになります。結果ターゲットに適切に届く映像クリエイティブに繋がっていくのです。

ターゲットイメージ→コンセプトメイキング→クリエイティブのフロー

ターゲットイメージ→コンセプトメイキング→クリエイティブのフロー

最近は、クライアントやマーケティングエージェンシーなど、様々な方から映像のご相談を頂きます。それらの要望を安易に叶えることだけを目的にしてしまわないよう、「コンセプトメイキング」とその重要性を皆さまに理解していただき、一緒に考えながら日々映像制作に携わっていければと考えています。