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クリエイティブディレクター
鴫原 剛

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たき工房でクリエイティブディレクター(以下CD)を務めている鴫原(しぎはら)です。長年アートディレクター(以下AD)として、ポスターや新聞広告、近年ではWEBデザインや商品開発、WEBムービーなど幅広い領域で数々の案件を手掛けてきて、近年このポジションとなりました。今回は、私の仕事を通して、制作会社CDとはどういうもので、今後発注する時にどうつきあったらいいのかのヒントのような話ができれば、と思います。

クリエイティブディレクターの「クリエイティブ」とは?

弊社では大きく分けて、①広告会社のクリエイティブ②クリエイティブ機能のない広告会社、そして③企業から直接、と3つの依頼主があるのですが、もともと私は②と③の仕事が多く、CDの存在する広告会社を通してではなく、直接クライアント企業の課題を伺い、提案するという経験を積んできました。そのスキルを若手ADの育成や新規の顧客獲得に活かすよう、弊社はじめてのCDに任命されたのです。

CDの役割はクライアントの課題を受け、解決に向けてクリエイティブで何ができるのかを見極め、ADやコピーライター、プロデューサーを導くこと。俯瞰で作成したコンセプトとの整合性、デザインやコピーの調整点を見つけ、クライアントやその先にいる消費者にも魅力的なクリエイティブに仕上げることがCDの目的地点です。また、費用面でもプロデューサーと相談しながら、クライアント的にも弊社のビジネス的にも最適な制作費を割り出すのも私の仕事です。

では、魅力的なクリエイティブとは何なのか?私は、クライアントが思いもつかない驚きと「その手はありだね」という納得感を同時に生み出すもの、だと考えています。アイデアを仕事にしている以上、クリエーターなら誰しもクライアントの期待値を常に裏切る提案がしたいと願っています。でも、それが行き過ぎて「これでいってみよう」という納得感が得られなければビジネスとして成立しない。そのバランスを決める役割がCDなのです。

たき工房 クリエイティブディレクター鴫原 剛 ディレクション中の様子

クリエイティブディレクター鴫原 剛 ディレクション中の様子

すごいクリエイティブだけではいいコミュニケーションにならない。

あるベンチャー企業から、先端技術を採用した次世代パーソナルモビリティ(新型の移動手段)のパッケージデザインのコンペ依頼を受けました。競合案件ですので、コンセプトもデザインも他社をしのぎクライアントを魅了できるインパクトが必要です。私は、社内でも特に尖ったデザインセンスを持つAD2名をアサインしました。

若くて勢いのあるADは、新しいアイデアやデザインが溢れるように出て来ます。しかし一方で、私たち同業者が「すごい」と思ったアイデアやデザインを必ずしもクライアントが気にいるとは限りません。デザインも最先端であればあるほど、万人には理解されにくくなるという側面があります。そのデザインに対価を払うクライアントの立場では、斬新だけど冒険的なデザインには慎重になるのは当然です。

考えた結果、この案件の場合は商品自体が最先端なので、ターゲット層を意識しても、ある程度尖ったデザインも効きそうだと判断しました。その上で、私たちは、今まで世の中になかった商品のパッケージとはどうあるべきかを考えました。ただ斬新なだけではなく、パッケージデザイン自体が商品の意味を発信するものとは?

たどり着いたのは「次世代の車への提案」というストーリーでSNSでもバズられるようなものにしよう、というアイディア。ヒントになったのはこの商品が満充電で移動できる時間が約20分程度ということです。渋谷を中心に20分で移動できる範囲を地図にしたパッケージで提案して、競合を勝ち取ることができました。商品の特性・機能・地図を用いることで、パッケージを手にしたときに商品を使用しているイマジネーションが広がる。そこに意味=ストーリーがあるかどうか、それを計るのもCDの仕事だと思っています。

年々、さまざまな企業から直接依頼をいただく機会が増えています。制作会社に直接発注する経験のなかった方も多く、デザインやクリエイティブの良し悪しの基準に迷われる方もいます。そんな時こそ私の出番だと考えています。

依頼される方の思いを共有しながら、クリエイティブチームとプロジェクトを導きます。ぜひ、ご相談ください。