Mirai Design
Meeting
左は、加藤煙火株式会社 花火師 加藤克典様、右は、株式会社たき工房 クリエイティブディレクター 藤井賢二

今回、花火師の加藤克典さんに会いに出かけたのは、「いろいろな問題に出会い、現場を観、話を聞き、つくって壊してを繰り返せる今の時期を大切にしたい」 と語るたき工房のクリエイティブディレクター、藤井賢二。
ものづくりにこめられた思いや悩み。変わっていく時代の波の中で、模索する 2 人が見出した共通点とは・・・。

 

花火は長い歴史の中で、みんなに育てられてきたエンターテインメント。

藤井:日本人って花火が大好きですよね。何がそこまで人の心をとらえるんでしょうか。

加藤:僕は、老若男女みんなが楽しめること、大勢が同時に楽しめること、それから非日常性だと思っています。上空に打ち上がることで、何気なく過ごしている場所が、突然変わる。その根元は音と光の力ですけど。

藤井:たしかに「花火が上がる」=「特別な事」、「夏の夜の花火」=「楽しい夏休み」という良いイメージが小さい時から結びついていますよね。

加藤:あと、海外では花火に長い時間をかけることはありませんが、日本の花火大会は90 分とか 120 分とかかけて「花火と一緒に時間を過ごす」んですよね。小さい時おばあちゃんに手をひかれて見て、その時間ごと思い出に残る、みたいな・・・。

藤井:長い歴史の中で、みんなに育てられてきたエンターテインメントと言えるかもしれませんね。三河には花火屋さんが多いと聞いたんですが、今いくつくらいあるんですか。

加藤:打ち上げの製造業者さんは愛知県に 4 件あります。でも実は、かなり前から海外からの製品に押されています。僕たちの仕事は、花火の製造と花火大会の運営なんですけど、最近は輸入した花火を準備して、大会の運営だけしますっていう業者さんも増えてきました。

藤井:海外の花火の方が安いから、低コストで多くの花火が打ち上げられるということですね。

加藤:そうです。質は僕たちの製造している花火の方が優れていますが、より多く上げてほしいというニーズには応えられるわけです。

藤井:加藤煙火さんでは年間いくつくらいの花火大会を請け負っているんですか。

加藤:大会を丸ごと任せていただける場合と、部分的な演出だけ頼まれる場合を合わせると、50くらいです。現在、僕たちに任せてくださっているお客様には、打ち上げ数だけではないところに価値を見出していただいていますが、それでもこれからのことは考えていかないといけないと思っています。日本製の1玉よりも海外製品2玉の方をお客様が喜ぶのであれば、海外製品2玉を打ち上げる方が正しいと僕は思うんです。でも、自社製品とアイデアの組み合わせで、打ち上げ数よりも圧倒的に勝る感動を届けることができます。それをお客様が花火を打ち上げる前に判断できるように、花火の打ち上げ数ではない部分の価値基準をつくる方法を模索しているところです。

藤井:「優れたアイデアや技術にお金を払う」っていう価値観がもっと定着していくといいですよね。

加藤:たとえば火薬の配合ひとつとっても、毎年安定したものを供給するには研究が必要だし、音楽と花火を合わせるのも、すごく時間のいる作業なんです。でもそういうところにお金をかけるという考え方が根付いていないというのは、たしかにありますね。自分たちのやっていることの価値がちゃんと認めてもらえるように、社会的な価値観を少しずつでも変えていきたいと思っています。

藤井:そこは僕たちの世界とも共通した悩みかもしれないです。ポスターを1枚つくるのに、「印刷する機械を動かすからいくらかかります」っていうことは理解されるけれど、「これを考えるのにこれだけ時間かかりましたからこれだけください」って言っても、「それはそちらの都合でしょう」って言う人もいる・・・。

 

 

ストーリーの発掘、という価値のつくり方もあると思う。

加藤:この現状の中で何かできることはないかと思って、花火大会が継続的に発展していくために必要なことを、勢いのある主催者さんたちに聞きに行ったことがあるんです。中でも印象的だったのが長岡。花火大会 のその先を見ているんです。最初は戦後の復興が目的だったんだそうです。でもそれがやがて中越地震からの復興が目的になり、今では花火大会を使った人口減少対策まで見据えている方もいらっしゃる。

藤井:花火大会をどうするか、じゃなくて、花火大会で社会をどうするかを市ぐるみで考えているんですね。

加藤:そうなんです。たとえば見に来た人が快適にすごすために必要なことには惜しみなくお金を使う。安全は最大のおもてなしだということで、警備にお金をかけることもいやがらない。そうすると、来た人のマナーも向上するんですって。市役所も、長岡の花火のパンフレットつくって配ったり、動画を配信したりしている。そうすると、スターマイン(※1)上げたいっていう団体さんがあらわれて、必要な金額を集めてくる。花火の本が本屋さんに並んで、それも売れる・・・。みんな長岡の花火のことを知って、協力しようっていう気風が生まれてくる。花火が人と人のつながりに発展していくんですね。
※1 スターマイン:速射連発花火。いくつもの花火を組み合わせ、連続的に打ち上げる花火のこと。

藤井:花火が人の気持ちを動かして文化になりながら、経済活動も活性化していくっていうことですね。

加藤:長岡の街を歩いていると、ほんとにそれを実感するんです。花火大会になると休みになる会社も多いらしくて(笑)。

藤井:それってもしかして、ストーリーを発掘して伝えるっていうことがうまくいっているんじゃないでしょうか。製品ってそれだけではどんな価値があるのか、なぜその値段なのかがわかりにくい。でも、つくられる工程とか、背景にあるエピソードを知ったら見る目が変わってきます。そういう価値のつくり方ってあると思うんです。

加藤:ストーリー、そうかもしれません!たとえば「白菊」っていう花火は、昔シベリアで亡くなった同胞への鎮魂が由来なんですけれど、長岡では、それをわかって見ていただくということを、主催者さんが意識的にされていて。

藤井:バックグラウンドが見えることで人の気持ちが動くんですね。だとすると、たとえば江戸時代や戦国時代に上がっていた花火を再現するプロジェクトなどは面白くなる気がします。今の花火の方が華やかだとは思うんですけど、ある種のストーリーが生まれますよね。「見たことのない花火」とか「ここでしかつくれない」っていう価値が生まれますし、歴史を知る上でも重要になると思うんです。戦国時代を題材にしたアプリをつくっているメーカーと組んで何かできる、みたいなことに発展するかもしれない。

加藤:面白いです!興味を持って見てもらえそうな気がします!

 

 

今はとにかく、「外に出んといかん」って思っています。

加藤:いきなり長岡と同じようになるのは難しいですが、僕はまず演出やプロデュース業にもっと力をいれようと思っています。花火大会の運営を通じて、お客様自身も気づいていないニーズを引き出したり、問題を解決したりできるようになることが大事なのかなと。

藤井:デザイナーも同じです。自分の作品を発信するためにも、できることをもっと広げないといけない時に来ていると思うんです。

加藤:それは何かきっかけがあったんですか。

藤井:衝撃的だったのは、あるTシャツのメジャーブランドなんです。デザイナーってもともとは紙面上の構成をつくるのが本業で、Tシャツのデザインは誰もがやりたがることだったんです。でもこのブランドが自分の好きなTシャツをつくれるアプリを開発した。で、僕自身、これやってみた時に楽しかったんですよ。それに気づいた時、デザイナーとしてはやられちゃった気がして。僕たちが本業としてつくってるものより、自分で好きに選んでつくる方が、面白いし価値があるじゃんって。このままでは、僕たちの仕事はどんどん必要なくなっちゃうなと。もっといいものをつくる努力をしなきゃいけないし、同時に、それをちゃんと伝えて、使ってもらえるしくみをつくれないと。

加藤:AIの進化とかも、びっくりしますよね。10年後、花火の製造はたぶんまだあると思うんですけど、ITでできることも多くなると思うんです。でも、花火は人々の記憶や思い出と結びついて愛されてきたから、ただ合理的、商業的になっていけばいいかっていうと、そうとも言えなくて。ある部分を商業ベースで考えながら、一方でみんなが持ってきた花火のイメージや伝統を大事にしていくっていう、2方向のアプローチが必要なのかなと思います。

藤井:デザインも本来、人生経験を重ねるほど良い仕事ができる職業だと僕は思っていて。若いセンスや体力もたしかに大切ですけど、一方で人生を積み上げてきたからこそ、人々に提供できる発想やモノもある。ただそれを活かすためには、常に時代の流れ、流行っていることを柔軟に受け止められる力が必要なんですよね。

加藤:そのためにも、僕はさまざまな人と接して新しい感覚と触れることが大事だと思っていて。実は一昨年、名古屋の工業大学の大学院で学んでたんです。院生たちが30人40人、自分たちおじさんが15人くらいいて、1年間いっしょに勉強するんです。少子高齢化の進んでいる島が、どうしたら持続発展できるかを考えたりしましたが、いまの若い子はぜんぜん違うなと。発想に垣根がない。自分たちおじさんは、もうこりかたまっていて・・・(笑)。

藤井:わかります。僕もちょっと前くらいに、大学にまた入って勉強しようかなと思ったことがありました。美大で学んだことなんて、もう時間も経ってるし、役にたたなくなってる。過去の仕事の経験値で仕事をしているだけでは失礼な話で、やっぱりこれから必要なものを勉強しなおして、新しい価値を提供していかないと。

加藤:とにかく、今は視野を広げるために「外に出んといかん」って思っています。

 

 

違う分野の人たちが会って考えることで新しいものをつくっていける。

藤井:自分たちもそうして垣根を越えていきたいし、僕は同時に垣根を越えたさまざまな人材が夢を持って集まりたくなる舞台をつくりたいんです。それによって人がお金を払いたくなるような、新しい物やサービスを開発できると思うんですね。頭のいい人はもちろん、とんでもないネタを考える人、何かを教えている人・・・。それがすぐに経済活動に結びつくわけではないかもしれないけれど、そこから何かが始まると思うんです。

加藤:そうですね。花火業者だけで集まって考えることってたしかに限界がある。一見まったく関係ないような、違う分野の人たちが会って考えることで、新しいものをつくっていけると思うので、僕も、そういう人たちが楽しく集まれる場所をつくっていきたいです。

藤井:そのためにも、自分たちにはこれだけのことができるっていうことを、世の中にアピールしていくことが必要なんじゃないかと。それで僕も今日、アイデアのお土産をひとつ持ってきたんですよ。打ち上げではなくて線香花火なんですけれど・・・。丸いカプセルの中に入れて室内で楽しめる「てのひら花火」、あったらいいなと思って。厚いガラスだったら熱も伝わらないと思うし、ガラスの容器を風鈴みたいにいろんなデザインにしてあげてもいい。

加藤:わぁ、面白いですね!すごく微妙な火薬量の調節の研究が必要になりそうですけれど、そういうノウハウを持っているところと組んで形にしてみたいです。

藤井:完成したら、イベント総合エキスポみたいなところでブースをかまえて売り込むとか。イベント会社は、お客さんが見たことのないものを安全に実現できたらうれしいだろうし、お客さんも、1回200円とかなら、ぜったいやりたいはず。インスタにも載せたくなると思うんです。

加藤:すごくいい考えですね。違う業界の人と話すって面白いという、まさに今それを感じています。

藤井:ありがとうございます。ある世界では当たり前になっていることも、違うコミュニティに行くと新鮮な刺激になってアイデアが生まれるっていうこと、ありますよね。これを機にまた交流していただければ(笑)!

加藤:こちらこそ、また遊んでください!

  • KATO KATSUNORI

    加藤 克典

    愛知県蒲郡市 加藤煙火株式会社 五代目。伝統的な日本の花火の製造技術と現代のエンターテインメントの技術を融合させ、花火の持つ「感動させる力」をさらに高めるべく、各方面で活動中。また、花火消費のひとつの完成形を「地域づくり」だと考え、各地で花火を通じた地域づくりのサポートも行っている。
  • FUJII KENJI

    藤井 賢二

    株式会社たき工房 クリエイティブディレクター。自社デザインプロダクト『TAKI PRODUCTS』クリエイティブディレクターを兼務。これまで多岐にわたる商品広告やファッション広告のアートディレクションを手がけるかたわら、同社の社会貢献活動である「TAKI Smile Design Labo」の中心メンバーとしても活動。デザインによる復興支援など、さまざまなプロジェクトでアートディレクターを務めている。

対談を終えて〜藤井の眼

デザイナーである自分は「モノづくり」しているんだという自負がありましたが、加藤さんの「毎年同じクオリティのものを提供することが大変」という言葉に、ハッとさせられました。「モノづくり」っていう言葉は、加藤さんのように、指先の感覚や職人のカンが仕上がりに大きく影響を与えるものこそしっくりくるなぁと。それが人に感動や喜びを与えるモノづくりにつながるというのは羨ましいと思いました。

一方でもったいないなと思ったこともあります。たしかに花火師という職業は、守らなきゃいけないものが多いと思うんです。失敗と改善を繰り返してつくられてきたものだし、変わらないから愛されているところもある。だからとても難しいと思うけれど、もっと攻めていくことも必要だし、攻められるんじゃないかと。この出会いがそのきっかけになったらうれしいなと思いました。

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