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デザイナー
唐鎌大也

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はじめまして。たきコーポレーションのデザイナー、唐鎌大也です。私は元々グラフィックデザイナーとしてこの会社に入社しましたが、最近はアートディレクターのポジションを担当させて頂くケースも多くなってきました。そこで今回は、これまでの経験や思いをベースにしつつ、私が思うアートディレクターに必要な能力について、紹介していきたいと思います。

唐鎌大也
2018年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。同年株式会社たき工房に入社。平面的なグラフィックを得意とし、グラフィック、WEB、ロゴ、CI/CI、ブランディング、パッケージなど幅広い領域での仕事に携わる。ここ数年、銭湯にハマる。

学生と社会人で大きく異なる、デザインへの向き合い方

私がたき工房(現たきコーポレーション)に入社したのは2018年のこと。最初に配属されたチームは、かなり自由度高く仕事をさせてもらえるところだったこともあり、デザイナーとして技術面のスキルを磨くのはもちろんのこと、デザイナーとしての考え方やスタンス、自分で考えて動く力など、人間力に関しても大きく磨ける環境でした。

デザイナーとして働いてみて改めて感じるのは、学生として取り組むデザインと仕事として取り組むデザインは、全くの別物であるということ。学生時代のデザインは良くも悪くもアーティスト寄りで、特に私の場合は、作りたいデザインがあってそれに合致する課題を捻出しているような節もありました。しかし仕事として取り組むデザインでは、具体的な課題が先にあり、それを解決するためのデザインを考えていきます。言うなれば、学生時代とは真逆のアプローチをしていくわけです。ともすればアイデアよりもロジカルな要素が重視される世界は新鮮で、とても刺激的に感じましたね。

またデザイナーの在り方に関しても、色々と学ぶことができました。デザイナーの仕事は、クライアントやアートディレクターが描くイメージを形にするのが一般的です。しかし一口にアートディレクターと言っても、具体的なイメージを示す人もいれば、デザイナーの自主性に任せてくれる人もいて、ただ単に指示に従えば良いというものではありません。場合によっては、アートディレクターとは異なるアプローチからのデザイン案を提案することもあります。これはつまり、例え新人デザイナーであったとしても、課題の大元と向き合い解決策を提示できる、アートディレクターとしての素養を育んでおく必要があるということです。これらを学べたことは自分にとって大きな成長と発見になりました。

一つひとつの経験が武器になり、増していく自身の深み

入社してからこれまで、代理店案件や直案件、サイトデザインにキャラクターデザイン、グラフィックデザインにパッケージデザインなど、さまざまな業界・ジャンルの仕事に携わってきました。

サイトデザインでは、はじめてWebデザインに挑戦してXDというツールを使ってみたり、キャラクターデザインでは、利用ルールなどをまとめたマニュアルも作ったり。新しいことにチャレンジする度に、新しいスキルや経験が磨かれていくのが楽しかったですね。

中でも印象に残っているのは、2022年3月に開業した、新橋駅の新たな商業空間「エキュートエディション新橋」におけるエキナカフードホール「HORA ANA table(ホラ アナ テーブル)」のロゴデザインに携わったこと。このプロジェクトに、私はデザイナー兼アートディレクターとして参加しました。

この案件が始まった当初は、「HORA ANA table」というネーミングも決まっておらず、目指したい方向性や、必要な機能、果たすべき役割などについて、一つひとつクライアントとすり合わせながら進めていきました。ほとんどゼロの状態から、ヒアリングを通して少しずつデザインを作り上げていく工程は、大変ながらも刺激的で、とてもいい経験になりました。以前にWebデザインも経験していたからこそ、映像ならこうした動き方もできるかもといった具合に、これまで自分が磨いてきたスキルの分だけアイデアの幅が広がっていったのも強く印象に残っています。

唐鎌大也 ブログ

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言葉で伝えることが、より良いデザインを生み出すきっかけになる

アートディレクターの役割も担っていく中で感じるのは、デザインそのものももちろん大切なのですが、そこに至る打ち合わせやヒアリングなどで、自身の考えやアイデアを言葉にして伝えることが重要であるということです。クライアントを説得するためには、担当者だけでなく決裁者の理解も必要不可欠ですが、自身が必ずしも決裁者とコミュニケートできるとは限りません。場合によっては、担当者の方に決裁者を説得してもらわなければならないケースも。そうした時は、単に良いデザインを用意するだけでなく、それをどう提案するか、その魅力をどう伝えるかということが重要になってくるのです。

また、何気ない会話の中で出たアイデアがプロジェクトの方針になったり、打ち合わせの場で積極的に発言した人がプロジェクトの主導を任されたりすることも少なくありません。さらに、自分のアイデアを言葉に出すことで他の人がアイデアを被せることができるようになり、一人では到底思いつかなかったアイデアが生み出されることもあるでしょう。

デザイナーはどんな思考で物事に向き合っているのか。普通はなかなかイメージできないものだからこそ、あえて自分からそれを発信していくことで起こせる化学反応もあるんだと思います。

新たなスキルを磨き、独自の強みを持ったアートディレクターへ

現在はデザイナー兼アートディレクターとして仕事をしていますが、将来的にはアートディレクター一本でやっていきたいと思っています。そのためには、まだまだ色んなスキルを磨いていかなければなりません。

今個人的に注目しているのは、コピーライティングのスキルです。デザインとコピーは別々に考えられるケースも多いのですが、一方で画と言葉の響きあいでメッセージを伝えるシーンも少なくありませんし、キャッチコピーを元にビジュアルを作ることもあります。あとは単純に、良い言葉があると良いビジュアルが生まれやすいんですよね。だからこそコピーライティングスキルを磨き、コピーも作れるアートディレクターというのを自身の特徴にしていきたいと思っています。

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デザインスキル、コピーライティングスキル、ディレクションスキル……。アートディレクターに求められる素養や、より強みを出していくための能力は数限りなくありますが、自分自身の価値を高めていけるよう、一つずつしっかりと向き合っていきたいと思います。