TAKI BLOG
TAKIブログ
テーマ:採用・リクルート
更新日:2026.05.27
デザイン業界に入って、最初にする仕事〜資料探しには、デザインのすべてが凝縮されている〜
経営企画室
採用/育成担当・執行役員
天明久尚

こんにちは。たきコーポレーションで人材採用・育成を担当している天明です。
学生の方とお話ししていると、よくこんな質問をいただきます。
「デザイン会社に入ったら、最初はどんな仕事をするのですか?」
デザイン会社ですから、最初からロゴを作ったり、グラフィックやWebのデザインをしたり、企画を作ったりするのではないか。そんなイメージを持たれている方も多いと思います。もちろん、いずれそうした仕事には関わっていきます。けれど、それはやや先の話。現場に配属された段階でまず任されるのは、もっと手前の仕事であることが少なくありません。そのひとつが、資料を探すこと。今日は、この「資料探し」について、深掘りしてみたいと思います。

最初に与えられる仕事「資料探し」とは
入社当初、先輩社員からこんな仕事を頼まれることがあります。
「このテーマで、参考資料を集めてきて」。
デザインをするために入ったのに、最初は資料探し。少し意外に感じる方もいるかもしれません。資料探しにも色々あります。過去のキャンペーン企画やサービスの事例を集めたり、合成用の写真や画像・イラストなどの素材を集めたり、ロゴやデザインのトーン&マナーのサンプルや、競合する企業の商品パッケージを集めたり。
けれど、実際にはこの仕事の中に、デザインに必要な考え方がしっかりと含まれているのです。新人に資料探しが任されるのは「その作業が単純だから」ではなく「デザインの基礎を学べるから」なのです。
「資料探し」を分解してみる
一見するとシンプルに見える資料探しですが、少し分解してみると、実はかなり多くの思考が含まれていることがわかります。まず必要となるのは「上司の指示を理解する力」です。
①上司の指示を理解する力
たとえば「若い女性向けの、ナチュラルな化粧品ブランドの参考例を集めてきて」と言われたとき、そのまま検索ワードにするだけでは十分とは言えません。
・上司は、その資料をどう使おうとしているのか?
・いま業務が進んでいる中で、どのフェーズのための資料なのか?
・「若い女性向け」とは、具体的にどの層を指しているのか?
こうした前提を少し整理するだけで、集めるべき資料の方向が見えてきます。最初に求められるのは、検索の速さよりも、意図を読み取る力です。
②指示に合うものを、必要なぶんだけ探し出す力
次に必要なのが、量。資料を元に具体的な検討を加えていくためには、ある程度の量が必要になります。具体的な分量は一概には言えませんが、まずは10件以上を目安に考えると検討しやすくなります。もちろん、最初は「数を出すのが苦手」ということも少なくありません。ここは、経験を重ねて、徐々に慣れていけると良いかもしれません。
③バリエーションを探し出す力
さらにもう一歩進むと、言われたものだけを集めるのではなく、バリエーションにも目が行き届くようになります。先ほどの化粧品ブランドの例で言えば「ナチュラル系」だけでなく「ややポップ寄り」「ややカジュアル寄り」「機能・最先端系」など、視点を広げた資料収集ができるようになります。ここまできて、ようやく集めたデザインの方向性に幅が見えてきます。
④分類する力
資料は収集したのち、比較・選別する必要があります。そのために必要なのが、集めた資料をテーマに合わせて分類する力です。たとえば、
・モノトーン系 or カラフル系
・写真主体 or イラスト主体
・抽象系 or 具体系
といった形で、拠り所となるキーワードで整理していきます。これは、見た目の印象だけでなく、デザインの構造を読み取る力にもつながっていきます。

縦軸と横軸で対になるキーワードを設定し、分類していくのも良い方法
⑤良い要素を定義して選び取り、組み合わせを想像する力
資料が分類されると、見比べやすくなります。この段階になると、集めた資料の中から「良い」と思われる複数の要素を組み合わせて、テーマに合う新たな表現や企画を想像する力、が必要になります。
・この企画の方向性が良い
・この余白の使い方がうまい
・このレイアウトの考え方が参考になる
・この写真の雰囲気が合っている
要素ごとの良さを組み合わせると、どのようなアウトプットになるのか?求められているのはデザインの骨格を想像する力です。
⑥時間内に終わらせる力
そして最後に必要なるのが、すべての工程を「時間内に終わらせる力」。どのような仕事にも必ず締切があり、その締切に品質をもって応えるのがプロの仕事になります。
こうして見ていくと、資料探しとは
・読み取る
・集める
・分ける
・比較する
・定義する
・組み合わせる
という小さなデザインプロセスでできていることがわかります。これが、入社したてのデザイナーに資料探しを任せる最大の理由なんです。この工程を一通り経験すること自体が、デザインの基礎を身につけることにつながっていきます。実際の現場でも、資料探しが上手な人ほど、デザインも上手なことが多いです。
資料探しがうまくいかないときは
資料探しを始めたばかりの頃は「数が集まらない」「似たような資料ばかりになる」といったことがよく起こります。
こうしたときは、探し方そのものよりも、前提理解の曖昧さが原因になっていることが多いです。何を探せばよいのかがはっきりしていないと、判断に迷いながら進めることになり、結果として手が止まりやすくなります。
・今回の資料は何のために必要なのか
・どこまでが条件で、どこからが自由に考えてよい範囲なのか
こういったことを整理してみると、進めやすくなることが多いです。もし不明点があれば、上司や先輩に確認することも大切です。方向性をすり合わせることで、その後の作業はスムーズになります。
学生のうちからできること
資料探しの力は、入社後に求められるものではありますが、その感覚自体は学生のうちから少しずつ身につけていくことができます。特別な準備をする必要はありません。
日常の中で目にするデザインを見たときに、少しだけ「なぜこうなっているのか」を「作り手の立場になって」考えてみるだけでも十分です。
・なぜこの企画を選び、このトーン&マナーにしたのか?
・このレイアウトにしなければならなかった理由は?
・なぜこのボタンはこの色でこの位置なのか?
・この言葉づかいにした理由はなにか?
こうした視点を持つことで、デザインを見る解像度が少しずつ上がっていきます。
デザインの基礎は、最初の仕事に含まれている
デザイン業界に入って最初にすることは、必ずしも「つくること」ではありません。まずは、目的を理解し、参考資料を集め、違いを見つけ、整理し、考えること。そのひとつひとつの中に、デザインの基礎があります。
資料探しは地味に見えるかもしれませんが、その人の考え方や視点がよく表れる仕事でもあります。これからデザイン業界を目指す方にとって、この記事が少しでもイメージを持つきっかけになれば嬉しいです。
