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デザイナー/ブランドプランナー
橋本奈加子

投稿者

デザイナー
鳳崎 優和

投稿者

はじめまして、たき工房ブランドデザイン部の橋本・鳳崎です。
私たちは先日、宣伝会議主催のウェビナーにて、「Z世代が語るパーパス・ブランディング」をテーマにお話しさせて頂きました。今回は、このウェビナーにおける内容を軸にして、Z世代とは一体何なのか、そしてZ世代が提供するパーパス・ブランディングの実例をご紹介させて頂ければと思います。

橋本 奈加子
デザイナー/ブランドプランナー
武蔵野美術大学空間演出デザイン学科ファッション専攻卒。2019年にたき工房入社後は、デザイナー兼プランナーとしてデジタルネイティブの感性を生かし、現代のニーズを捉えた企業のブランディングに取り組んでいる。
趣味は美味しいご飯と美味しいお酒。

橋本個人作品

1.強く柔らかく神聖な精神性をインスタレーションで表現した作品です。(鷹嘴瑞帆共同作品)
2.映画「青の炎」からインスピレーションを受けて服をデザイン製作し、モデルをスタイリングして撮影した作品です。

 

鳳崎 優和
デザイナー
京都工芸繊維大学を卒業後、2020年にたき工房へ入社。ブランドデザイン部のデザイナーとして、グラフィックを中心としたツール制作の他、ワークショップやセミナー登壇なども行う。
趣味はネットと読書、音楽を聴くこと、買い物など。

鳳崎 個人作品

1.架空のバンドのアートワークです。フューチャーポップぽい要素もあるイメージです。
2.図形楽譜。好きなアーティストの楽曲をイメージして制作しました。
3.天気図のコラージュのようなグラフィックです。

Z世代の価値観とは

橋本:まずは、最近耳にする機会も多い「Z世代」について、その言葉の意味から見て行きましょう。Z世代とは、おもに1995~2010年に生まれ、2010年代後半から20年代にかけて社会に進出する人々のことを指した言葉です。かみ砕いて言ってしまえば、今どきの若い世代、ですね。このZ世代は、物心ついた時からインターネットが普及していたことからデジタルネイティブ世代と呼ばれたり、またバブル崩壊やリーマンショックを経た経済不況の中に生きてきたことから現実主義だったりと、Z世代ならではのさまざまな特徴を備えていると言われています。

鳳崎:しかしインターネットで出てくるZ世代の情報は、Z世代ではない人が書いている感じのものも多く、「そうそう!」と思うものもあれば「これは違うよね」となるものも。そこで、Z世代である私たち自身が、Z世代の価値観について改めて考え、言語化してみることにしました。そうして導き出されたのが、以下の4つの価値観です。

Z世代価値観

鳳崎:中でも特徴的なのが、「多様性は当たり前」という価値観ではないでしょうか。最近はネットやニュースなどでも、「多様性を認めて……」なんて話題が出てきますが、私たちZ世代は多様性をそんな風には捉えていません。それこそ、道端に草が生えていても特に意識しないように、それぐらい当たり前に存在するものとして、多様性を受け入れているんです。

橋本:ですので多様性を「認める」という言葉には、ちょっと引っかかってしまいますね。認めるというと、まるで今までなかったものを新たに受け入れようとしたり、それを許可する、といった上からな目線を感じてしまいます。しかしZ世代にとっては、みんな違うことは当たり前だし、一緒じゃないからダメ、一緒だから良い、という考え方はありません。
この価値観に関しては、生まれた時からインターネットやSNSが身近にあり、さまざまな人や意見を目に出来る環境が整っていたことが、大きく影響しているのかもしれません。

鳳崎:時には過激な意見も含め、世の中にはいろんな考え方があって、それに対して距離を置くこともできるし、自ら積極的に議論に飛び込んでいくこともできる。こうした自由な風潮がある中で育ったからこそ、必ずしも同じ考え・意見ではないことが当たり前になっているんでしょうね。
またもう一つ特徴的なのが、「共感・本質を重視する」という価値観です。私たちZ世代は、ポジティブなものはもちろん、ネガティブなものであっても、共感できるかどうかを非常に重視します。

橋本:人と違うのが当たり前と感じているからこそ、何か特定のことで共感できたり共通点が見つかったりするととても嬉しく、またそうした共通点を通じて自分を発見していくような感覚ですね。

鳳崎:イメージとしては、外側からではなく、内側から自分の輪郭を押し広げていく感じでしょうか。
そして、Z世代のさまざまな価値観を総合し一つにまとめたのが、以下の言葉です。

Z世代みんな違うが出発点

Z世代が提供するパーパス・ブランディング

橋本:多様性が当たり前で、共感を大事にするZ世代だからこそ、企業や商品、サービスを選ぶ際にも、共感できるかどうかをとても重視する傾向があります。そしてその共感を生み出す重要な要素となるものこそ、近年ますます注目されている、パーパスです。

鳳崎:パーパスとは、企業の存在理由のこと。その企業は何を思い、何のために事業を行い、どのような価値を社会に提供するのか。それを言語化したものがパーパスです。特にこれからの時代を担っていくZ世代にとって、共感を生み出すためのパーパスは、無くてはならない必須要素の一つになると言っても過言ではありません。そしてそれは、対お客様はもちろん、対社内についても同様のことが言えるでしょう。パーパスが明確な企業は、サービスや商品の購買対象となりやすいだけでなく、ここで働きたいという意欲にもつながりますね。

橋本:Z世代である私自身が主軸となって、パーパス策定のプロジェクトを行った企業があります。それが、岡山県に本社を置くIT企業である両備システムズ様。

同社は2020年にグループ6社が合併して再出発した企業で、合併により生じた社内各所の方向性の違いに課題を感じておられ、インナーブランディングとその後にアウターブランディングを目指し、パーパス策定に踏み切りました。

鳳崎:たき工房では、パーパスが注目を集める以前より、さまざまな企業のパーパス・ブランディングをサポートしてきましたが、大事なのは、あくまでもパーパスはクライアント自らが導き出すこと。そのためたき工房では、一方的にパーパスを作り出すのではなく、ワークショップ等を通じて、クライアントと一緒にパーパスを導き出し、言葉を作りあげていきます。

橋本:両備システムズ様の場合には、Z世代の私たちがパーパス・ブランディングを行うからこそ、以下の3つの要素を取り入れて社内から意見を吸い上げ、パーパスを導き出すようご提案をしました。

 

私たちがブランディングで目指したこと

Z世代ブランディングで目指したこと

さらにパーパスを策定するための「調査」「議論」「決済」というプロセスのすべてにおいて、経営層を含むすべてのレイヤー、全社員を巻き込んで進めることを意識しました。こうした全社員を巻き込む形は、すべての人に異なる意見があり、それぞれが価値あるものであるということを日々感じている、Z世代ならではの設計と言えるかもしれません。

調査段階でブランディングに特化したアンケートを実施したり、ワークショップなどを通じてある程度パーパスが言語化できた後に投票を行うことで、全社員がパーパス策定に参加できる機会も設けています。

ブランドコンセプト案投票アンケート

Z世代アンケート

鳳崎:またデザイン会社ならではの取り組みとして、ブランディングプロジェクトの進行具合を告知するポスターなども制作しました。各ステップにおける結果を社内のより多くの人に視覚的に伝えることで、ブランディングの気運作りを目指しました。
こちらはクライアントの担当者様もとても前向きにご協力してくださり、社内でも特に目立つ場所に掲示して頂けるなど、プロジェクトの進行を大いに助けて頂きましたね。

橋本:全社員が参加できる設計にしたからこそ、社員の方にとっては納得度が高く、お客様や社会にとっては共感を得やすい言葉に仕上がりますので、担当者様のご協力にはとても感謝しています。

ブランディングプロジェクト告知ポスター

Z世代告知ポスター

こうして、クライアントと共に作り上げたパーパスが

「ともに挑む、ともに創る。真心からの思いやりと確かな技術力で 想像もつかない世界を創り出し 幸せの選択肢を増やします。」です。

Z世代 両備システムズ ブランドコンセプト

経営理念である「忠恕(真心からの思いやり)」という言葉を活かしたり、「幸せの選択肢を増やす」という、一方通行でない、相手を尊重した価値の届け方を提示したり、両備システムズ様らしさとZ世代らしさの両方がミックスされた、唯一無二のパーパスがここに完成しました。

鳳崎:両備システムズ様とは、パーパス策定後もブランドコンセプトの理解・浸透を図るための社内報やZOOM背景を作成するなど、クリエイティブで引き続きサポートさせて頂いています。会社案内やコーポレートサイト、広告などにもクリエイティブを反映していく予定ですので、社内外に向けて広く効果的に発信していけるとうれしいですね。

Z世代 両備システムズ 浸透ツール

Z世代が思い描く理想の未来

鳳崎:今の世の中にある対立関係の多くは、新しいものや自分と異なるものへの無意識的な恐怖心が、根底にあるように感じます。しかしこうした新しさや分からなさを、もっとポジティブなものとして捉えられるようになれば、異なるものとの出会いの数だけ自身の選択肢や考え方が生まれるのではないでしょうか。一つとして同じものがない、一人ひとりが独自の魅力を発揮できる社会になってほしいですね。

橋本:これは私の個人的な意見ではあるのですが、新しいものへの恐怖というのは、自己肯定感の低さにも原因があるのではないかと思います。自分を肯定的に捉える意識が弱ければ、自身を守るために新しいものや分からないものを遠ざけてしまうこともあるでしょう。まずは誰でもない、自分で自分を愛すること。そうした身近なことの積み重ねによって、多様な考え方が共存する世界に近づけると信じています。