TAKI Magazineー 制作における『知』を紐解く ー

投稿日:2025.12.12 更新日:2025.12.12

インナーブランディングとは?目的や効果、進め方について解説

「インナーブランディング」という言葉をご存じでしょうか。

「ブランディング」とは一般的に、企業やサービスの価値を社外へ発信し、認知向上やファンづくりにつなげる活動を指します。

 

それに対して「インナーブランディング」は、従業員に対して自社の価値・理念・商品の魅力を正しく理解してもらうための取り組みを指します。近年、外部へ発信する「ブランディング」の前提として、まず社内で共通認識を持つための「インナーブランディング」を行うことが重要とされており、その注目度が高まっています。

 

どれだけ優れた価値を持つ企業であっても、現場の従業員がその背景や想いを十分に理解できていないケースは少なくありません。こうした状況が続くと、従業員のモチベーションや会社への愛着が低下し、離職につながる可能性があります。また、顧客が受けるサービスとブランドが掲げる価値との間にギャップが生まれ、顧客満足度を損なうリスクも考えられます。そのためインナーブランディングは、企業が一貫した価値提供を行ううえで欠かせない取り組みといえます。

 

本記事では、インナーブランディングの目的や効果、具体的な進め方に加え、実例についてもご紹介します。

インナーブランディングとは?

インナーブランディングとは、企業が社会に提供する価値や理念を、従業員一人ひとりに浸透させる取り組みのこと。従業員が企業の目指す方向性や存在意義を理解・共感することで、仕事へのモチベーションが高まり、組織としての一体感も生まれます。

具体的には、次のような手法で行われます。

 

・社内報

自社の経営理念やトップメッセージを定期的に発信し、社員が理念に触れる機会を増やすことで理解促進につなげます。また、今後の目標や社員に期待する行動などを丁寧に伝えることで、会社の方向性を共有できます。さらに、従業員に関するニュースやエピソードもあわせて発信することで、連帯感や仲間意識を高める効果もあります。

 

・ブランドブック

企業理念や成り立ち、今後のビジョンなどをまとめたブランドブックを配布し、従業員が何度でも見返せるようにすることで、理解を深めることができます。また、取引先など外部にも配布すれば、内外両面でのブランディングにもつながります。

 

・ブランドムービー

トップメッセージや企業理念を動画で伝えることで、文字情報よりも感情に訴えやすくなります。映像・音声・音楽などの視覚・聴覚的要素を活用することで、より印象的にメッセージを届けられる点が特徴です。また、手軽に視聴できるため、忙しい従業員にも届きやすいツールです。

 

・ワークショップ

企業理念を自分の行動にどう落とし込むかを考えたり、グループワークを通して意見を交わしたりすることで、仲間意識や企業への愛着が育まれます。

 

ブランディング(アウターブランディング)との違い

「ブランディング」と言う場合、一般的には外部に向けて行う“アウターブランディング”のことを指します。このアウターブランディングとは、自社の独自性や強みを明確にし、他社との差別化を図りながら「選ばれる理由」をつくる取り組みのこと。企業や商品が市場でどのように見られ、どのように記憶されるべきかという“ブランドの土台づくり”を担います。

 

当社では、実際に下記のようなブランディングを過去に実施しました。

 

・日光市 ブランディングプロモーション

NEW DAY,NEW LIGHT.日光のキービジュアル

変わりゆく社会環境や生活者意識の中で、今後も「選ばれる日光市」であるために、日光市の資源に新しい光を当てる新たなブランディング「NEW DAY,NEW LIGHT.日光」を当社にて担当。VI開発からWeb制作のほか、地産商品のパッケージ制作などを行いました。さらに都内の銭湯にて、「日光風呂詣」というイベントを開催。グラフィックなど幅広く制作しています。

詳しくはこちら:日光市のブランディングプロモーション・グラフィック制作を実施

 

・artience様 企業ブランディングムービー制作

「artienceは、私たちだ。」キービジュアル

東洋インキSCホールディングス様が、2024年1月に「artience」へ社名を変更されたため、認知拡大ブランディングのご相談をいただきました。artience様が大切にする「人の感性や心の豊かさ」と、「一人ひとりの想いがartienceをつくり、育てる」というコンセプトを軸に、世界中の社員が起点となってブランドを育んでいく姿を表現したブランドムービーを制作しました。

詳しくはこちら:artience様・社名変更による企業ブランディングムービー制作

インナーブランディングの目的と効果

インナーブランディングにはさまざまな効果がありますが、代表的なものとしては以下のようなものが挙げられます。

 

・従業員の帰属意識の向上

企業理念やビジョンへの理解・共感を深めることで、帰属意識が高まります。それにより「良い会社に所属している」という誇りを持つようになり、日々のモチベーションや仕事への満足度の向上のほか、離職率の低下にもつながります。

 

・営業活動の成果向上

従業員が自社のブランドや価値に自信を持てるようになることで、商談の場でも自社の強みや他社との違いを、的確に自信を持って伝えられるようになります。その結果、商談の成功率が上がる可能性があります。

 

・採用活動への好影響

採用活動の際にも、自社の魅力や独自性を明確に伝えられるようになり、志望者の増加や採用の質の向上につながります。

 

ブランディングに目が行きがちな企業も多いですが、実はインナーブランディングも同様に重要な取り組みであることに間違いはありません。社員が自社に誇りを持ち、組織の一員として主体的に動ける環境をつくることは、長期的な成長や事業成果にも直結します。

インナーブランディングの進め方

インナーブランディングを実行する際、「とりあえず社内報やブランドブックを作って周知すれば良い」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、このように“なんとなく”でインナーブランディングを進めると、思ったより効果が出ないばかりか、場合によっては逆効果になってしまう場合もあります。そのため、以下の4つのステップに分けて着実に実施することが大切です。

ステップ1:現状把握と課題の明確化

まずは現状を知り、どのような形でインナーブランディングを進めていくかの方針を探ります。その際、従業員と企業のトップ層双方からヒアリングを行うことで、インナーブランディングにおいてどのような課題や認識のズレがあるのかを整理していきます。この土台をしっかり固めることで、従業員へより正確にメッセージを伝える施策を実行することができるようになります。

ステップ2:理念やビジョンの再言語化

すでに企業理念やビジョンがしっかり固まっていたとしても、それが従業員にとっては理解や共感のしにくいものになっている可能性もあります。そのため、ステップ1で実施した従業員・企業トップ層のアンケートも参考にしながら、「この会社はなんのために存在し、どこへ進んでいくのか」を改めて言語化し、理解・共感しやすい言葉に置き換えます。

ステップ3:施策の計画と実行

課題の整理、理念やビジョンの再言語化ができたら、いよいよ施策を実行します。その手法としては、社内報やブランドブックの発刊や、ワークショップの開催、ブランドムービーの制作などが挙げられますが、どの手法を選ぶかはステップ1・2で得られた結果などをもとにしながら決定します。

ステップ4:効果測定と改善

インナーブランディングを実施する際は、その効果をきちんと検証することが大切です。やりっぱなしで一度きりの取り組みになってしまうと、従業員の行動変化につながりにくいだけでなく、実施の意図が十分に伝わらず、かえって帰属意識の低下を招くおそれがあります。

 

実施後は振り返りを行い、得られた成果や課題を今後の施策計画に活かしていきましょう。このように段階的に取り組みを進めていくことで、より多くの従業員の心に響くインナーブランディングを実現できます。

インナーブランディングの事例

インナーブランディングの目的や進め方について解説してきましたが、具体的な事例を知りたいという方もいらっしゃるかと思います。ここからは、インナーブランディングが実際にどのように機能するのか、当社が携わった事例をもとにご紹介します。

 

・「進研ゼミ」インナーブランディングのためのpurpose施策

ベネッセ_パーパス

株式会社ベネッセコーポレーション様は、「こどもちゃれんじ」や「進研ゼミ」などの通信教育を展開しています。少子化の進行や異業種の参入など、変化の激しい教育業界の中で、「進研ゼミ」は校外学習領域での新たなビジネスモデルの追求と、事業再構築に向けた第一歩としてインナーブランディングのためのワークショップを実施。結果、サービスや事業に対する愛着、また企画や施策の自分ゴト化へもつながりました。

詳しくはこちら:「進研ゼミ」インナーブランディングのためのpurpose施策

 

・東京駅商業施設のCSサービスコンセプト開発とブランディング

ONE STORY, ONE STATIONと書かれたビジュアル

多くの人が行き交う東京駅の商業施設で、スタッフが一体となって目指す方向を共有するためのCSサービスコンセプトを開発しました。初年度はインタビューワークを通じてMISSION・VISION・SERVICE CONCEPTを策定し、ブランドブックとコンセプトムービーで浸透を支援。結果、覆面調査で全店舗の総合ポイントがアップするなど、良い変化を生み出すことができました。

詳しくはこちら:東京駅商業施設のCSサービスコンセプト開発とブランディング

インナーブランディングでエンゲージメントを高めよう

企業のブランディングというと、どうしても外部への発信やイメージ形成に意識が向きがちです。しかし、本質的なブランド価値を支えるのは、従業員の理解と共感です。つまり、インナーブランディングは「内部施策」であると同時に、企業全体の競争力を底上げする「経営戦略の一部」といえます。企業が持続的に成長していくためには、従業員一人ひとりが自社の理念や目的に共感し、自分ゴトとして行動できる状態をつくることが欠かせません。

 

「どうすれば、従業員が会社を誇りに思い、愛着を持てるのか」を考えていくことが、これからの時代のブランド経営の要になるでしょう。

TAKI Magazine編部 執筆者情報

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