TAKIブログ
CDO
クリエイティブディレクター
藤井賢二

こんにちは、たきコーポレーションの藤井賢二です。現在、UXデザインカンパニーIDEALにて、ケニアのキベラスラムに暮らす若者たちをインターンシップ生として雇い、とあるプロジェクトを進行させています。今回は、そうした活動の経緯や意図について、詳しくお話しできればと思います。
目次
社会貢献活動を通じて感じた、スラムの本当の課題
たきコーポレーションでは、これまで社会貢献活動「TAKI SMILE DESIGN LABO」の一環として、ケニアのキベラスラムにある学校「マゴソスクール」を訪問。主に子どもたちを対象に、デザイン教育に関するワークショップや支援を行ってきました。
ただ、そうした活動をする中で次第に感じるようになっていったのが、これだけではキベラスラムに暮らす人々の暮らしを豊かにすることはできないのではないか、という思い。子どもたちへの教育はとても価値のあることではありますが、その結果が出始めるのは5年も10年も先の話です。もっと短期で結果が出て、人々の暮らしに直結するような取り組みをしていった方が良いのではないかと思うようになっていたのです。
そのため、昨年実施したケニア支援では、従来のマゴソスクールでの支援と併せて、キベラスラムでのフィールドワークを実施。スラムで生活する各分野の職人たちと一緒に、何かしらのものづくりができないかを探っていきました。

スラムの職人たちを取材している藤井たち(2024)
しかし、フィールドワークを行う中で感じたのは、現地の人々は今の暮らしに課題感こそ覚えているものの、私たち日本に暮らす人々が思うほど現状を深刻に捉えていないということ。確かに不便ではあるのだけれど、何としてでもそれを改善したいというほどの熱量を感じることができなかったんです。実際、過去には有名な日本の大学が本格的な支援に乗り出したものの、結果的にその取り組みはうまく行かず、狙い通りの改善を実現できなかったという例もあります。
ネガティブを無くすのではなく、ポジティブを伸ばす
そこで考えたのが、彼らが困っていることを改善しようとするのではなく、彼ら自身が希望を持って取り組めることを支援してみてはどうか、ということ。つまり、ネガティブを無くそうとするのではなく、ポジティブを伸ばそうと思ったのです。
そうして現地の人々に話を聞いていくと、彼らはサッカーが好きで、ヨーロッパのプロリーグの中継などをみんなで観戦することを、日々の大きな楽しみにしていることがわかりました。だったら、その好きで楽しいスポーツイベントを、自分たちで作り上げられるようにしてみてはどうか。自分たちでスポーツイベントを主催できるようになれば、たきコーポレーションはもちろん、他の協力・協賛企業を呼び込むこともできるようになるはず。

スラムの若者たちにグループインタビューを行う藤井(2024)
そして、老若男女問わず楽しむことができるスポーツとしてダーツ大会を、現地の人々のマネジメントによって実行に移すプロジェクトがスタートしたのです。
才気あふれる若者たちが集まり、プロジェクトがスタート
プロジェクトを進めるにあたっては、現地の若者たちをたきコーポレーションのインターンシップ生として採用し、給料を支払いながら進行してもらうことにしました。そうした形であれば、私たちは雇用主としてしっかりと指導や教育をすることができますし、現地の若者たちも正式な仕事として前向きに取り組んでいくことができます。
インターンシップの募集は現地にチラシを掲示してもらい行いました。Webフォームを使い、かなり濃い内容を書かせる形ではありましたが、最終的には25人の応募が集まりました。エントリーのハードルは決して低くはありませんでしたが、ケニアの若者たちにとって日本の企業で働いた経験があるというのは非常に大きなアドバンテージになるらしく、意欲の高い方々が集まってくれたと感じています。
その後、書類選考をして3名に絞り、7月には私もケニアに訪れ、3日間の選考兼研修を行いました。私がざっくりと進め方を解説した上で、3日間でできるところまで、ダーツ大会の企画を考えてもらう研修だったのですが、皆さんとても優秀で、簡易的ながらもダーツ盤を作り上げるなど、しっかりと結果を残してくれて驚きましたね。

2025年7月に行った三日間の研修
また特に大事にしていたのが、意識をしっかりと共有すること。本インターンシップでは、ダーツ大会の開催を目指してはいますが、それがゴールというわけではありません。自らの手でスポーツイベントを企画・運営することでノウハウを積み、今後私たちの助けがなくともプロジェクトを進行させていくスキルを身に付けることこそが真なる目標です。自分たちの力でキベラスラムの現状を打破し、自分たちの力で豊かさを掴み取る。そうしたモチベーションと実行力を養うために参加をするんだという意志を、しっかりと持てている方を採用しようと決めていました。

3日間の研修の翌日 選ばれた3名のインターンシップ生とプロジェクト関係者
12月の本番に向けて、これからもプロジェクトは走り続ける
そうして最終的には3名の方に絞り、たきコーポレーションのインターンシップ生として採用。12月7日に本番となるダーツ大会を開催することを目標に、既に8月20日にはオンラインで日本とケニアを繋ぎ、初回のインターンシップを行いました。
もちろん、スラム特有の課題がないわけではなく、現地の機材がうまく動作しなかったり、急に停電になってしまって回線が繋がらなかったり、などといったこともあるのですが、比較的順調にプロジェクトは進んでいると言えるのではないでしょうか。
これからも、2週間に1回のペースで現地とオンラインで繋ぎ、インターンシップを行っていく予定です。この経験が一つの実績となり、キベラスラムに新しい風を吹かせることができたらうれしいですね。

2025年9月 オンラインミーティングの様子
以下、現地で活動するインターンシップ生3人の様子




