TAKI MAGAZINEー 制作における『知』を紐解く ー
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コミュニケーションデザインとは?成果につながる設計思想と実践ポイントを解説
企業やサービスの広報活動は日々多様化しており、SNS投稿や広告配信、イベント開催、Webサイトでの情報発信など、さまざまな施策が行われています。しかしこうした取り組みをしていても、「思ったようにターゲットに伝わっていない」と感じるケースは少なくありません。その背景にあるのが、現代の情報環境です。インターネットやSNSの普及により、ユーザーは日々膨大な情報にさらされています。そのため、ターゲットを定めて情報を発信しても期待したほどの反応が得られず、結果として情報が埋もれてしまうといった課題が生まれることもあります。
こうした課題を解決する考え方として注目されているのが、「コミュニケーションデザイン」です。ユーザーがどのような状況で情報に触れ、どのように理解し、最終的にどんな行動を取るのか。ユーザー視点で体験全体を捉え、意図した理解や行動につながる流れを設計することが、これまで以上に重要になっています。
本記事では、コミュニケーションデザインの基本的な設計プロセスや実践ポイントのほか、よくある失敗例について紹介します。
INDEX
コミュニケーションデザインとは
コミュニケーションデザインとは、「誰に・何を・どう伝えるか」を設計し、相手に情報を正確に伝え、望ましい行動へとつなげる考え方のことを指します。「デザイン」というと、見た目のことを想像しがちですが、本来的には「設計」という意味もあり、言葉や構成、タイミングなど、「伝わり方」そのものもデザインにおける大切な要素の一つです。
UX(ユーザーエクスペリエンス/ユーザー体験)との関連
コミュニケーションデザインと似た概念として、「UX(ユーザーエクスペリエンス)」があります。
UXとは、利用者がサービスや製品を利用する過程でのあらゆる体験を指した言葉で、そこでは「感情」や「印象」なども含まれます。この考え方をもとにサービスや製品を設計すれば、ユーザーにとってストレスが少なく、また価値の高い体験を提供できるようになるため、ユーザー満足度の向上が期待できます。
コミュニケーションデザインでは、こうしたUXデザインの考え方を含みつつ、全体的な体験設計を行います。広告やSNS、Webサイト、イベントなど、複数のユーザーとの接点(タッチポイント)を横断しながら、「どのような流れで情報に触れ、どのように理解し、行動に至るのか」を設計する点が特徴です。つまり、UXデザインが「一つの接点における体験の最適化」だとすれば、コミュニケーションデザインは「複数の接点を含めた体験全体の設計」といえます。
■UXに関してはこちらの記事もご覧ください
日常の「不満」からUXへの気づきへ
コミュニケーションデザインの5つの設計プロセス
成果につながるコミュニケーションデザイン設計をするためには、感覚や経験だけに頼るのではなく、一定の設計プロセスに沿って進めることが大切です。ここでは、実務で活用しやすい5つのステップに分けて解説します。
①目的の明確化
まずはユーザーに何を伝えたいのか、伝えた結果どのような行動をしてほしいのかという「目的」を具体的に設定します。この点が定まっていないと、メッセージ性がぶれ、何を伝えたいのかがわからなくなり、ユーザーの行動を促すこともできなくなってしまいます。
②ターゲットの明確化
年齢や性別、職業などをもとに、ある程度具体的なターゲットを定めます。ターゲットが明確でないと、「誰に向けたメッセージなのか」が曖昧になり、結果として誰にも刺さらない内容になりがちです。
ターゲットを明確にする際におすすめなのが、「ペルソナ」を設定することです。性別や職業、ライフスタイル、趣味嗜好、家族構成などを踏まえ、届けたい人物像を数パターン設定することで、より適切なコミュニケーションデザインを構築できます。
■ペルソナに関してはこちらの記事もご覧ください
ペルソナとは?その設定手順やターゲットとの違いを紹介。
③ 手法・タッチポイントの検討
①②で定めた目的・ターゲットに合わせて、最適なプロモーション手法を検討します。広告やSNS、Webサイト、イベントなど手法は多岐にわたりますが、重要なのは流行や他社の成功事例を真似ることではなく、ターゲットの行動や心理に合っているかどうかです。例えばSNSをあまり活用していない層をターゲットにしたにも関わらず、SNSでプロモーションを行っていては期待する効果は得られません。
「最初に何を見て、次にどの情報に触れ、最終的にどんな行動を取るのか」を整理し、一連の体験を点ではなく流れとして設計することが、成果につながるコミュニケーションにつながります。この考え方はUXデザインとも共通しており、ユーザー視点で体験を俯瞰することが重要です。
④ コンテンツの制作
手法・タッチポイントが決まったら、コンテンツを制作します。
この際に重要なのが、①②③で定めた「目的」「ターゲット」「手法・タッチポイント」を踏まえ、それぞれの接点において果たすべき役割を明確にした上で制作することです。すべてのコンテンツで同じ情報を伝えるのではなく、「その接点では何を理解してもらうのか」「次にどんな行動につなげたいのか」を意識しながら制作します。例えば、SNSでは興味・関心を喚起する役割、Webサイトでは理解を深める役割、資料請求や問い合わせページでは行動を後押しする役割を担うなど、タッチポイントごとに期待する役割は異なります。それぞれの役割に応じて、情報量や表現、トーンを調整することが重要です。
また、ビジュアルやコピーといった表層的な表現だけでなく、構成や導線のほか、「いつ、どの情報を発表していくのか」という順番まで含めて設計することで「伝わる体験」をつくることができます。
⑤ 効果測定と改善
施策を実行したからといって、それで終わりではありません。コミュニケーションデザインでは、何を伝えたかではなく、「ユーザーがどのような行動を取ったか」を基準に効果を測定します。
測定にはWebの活用が効率的です。例えば、認知拡大が目的であればユーザー数、理解促進が目的であれば滞在時間、行動喚起が目的であればコンバージョン数などを軸に効果を測定するとよいでしょう。そのうえで、広告・SNS・Webサイトなど複数のタッチポイントを横断しながら、どの接点が次の行動につながっているのか、あるいはどこで離脱が起きているのかを確認します。これにより、個々の施策単体ではなく、体験全体としての課題を把握することが可能になります。
測定結果をもとに、メッセージの内容や情報設計、導線を見直し、次回の施策に反映していくことで、より精度が高く、成果につながるコミュニケーションデザインへとつなげていくことができます。
よくある失敗例と改善ポイント
コミュニケーション設計の5つの設計プロセスに沿って施策を進めていても、「思ったより効果が実感できない」「期待した成果につながらなかった」と感じることがあります。その場合、設計や表現のどこかにズレが生じている可能性があります。ここでは、よくある失敗例とその改善ポイントを紹介します。
情報を詰め込み過ぎている
行動を促すためにコンテンツに情報を詰め込み過ぎると、ユーザーは内容を理解しきれず、途中で疲れて離脱してしまうリスクが高まります。そのため、一つの接点で伝えるメッセージを絞るようにしましょう。「このコンテンツで何を一番理解してほしいのか」「次にどんな行動を取ってほしいのか」を明確にし、伝えたいポイントを整理することで、より伝わりやすいコミュニケーションになります。
デザインが過剰になっている
コンテンツ制作において、見た目の美しさやデザイン性、最新の表現手法にこだわりすぎてしまうケースも少なくありません。このような場合、どれだけ情報を整理し、ターゲットを定めていても、ユーザーからは「ただきれいな作品」として受け取られ、印象に残りにくくなってしまいます。デザインは目的ではなく手段。伝えたい情報が正しく、スムーズに伝わるかどうかを基準に、表現や構成を設計することが重要です。
施策ごとにメッセージがずれている
広告やSNS、Webサイトなど、複数のタッチポイントで施策を展開していると、各媒体に最適化しすぎてしまい、施策ごとにメッセージの方向性がズレてしまうことがあります。極端にいえば、媒体によってメッセージの意味が真逆になってしまっている、などというケースも起こり得ます。
これを防ぐためには、すべての施策に共通する軸となるメッセージや提供価値を明確にすることが重要です。そのうえで、タッチポイントごとに役割を分け、伝える情報の深さや表現を調整することで、体験として一貫性のあるコミュニケーション設計ができます。
当社のコミュニケーションデザインの例
当社ではさまざまなコミュニケーションデザインを担当していますが、今回はその中から2点、ご紹介します。
複合商業施設「フレスポ若葉台」インタラクティブコンテンツ制作
東京都稲城市・京王線「若葉台」駅前の複合商業施設「フレスポ若葉台」にて、インタラクティブな遊び場「#ヒトフミ」のデザインおよびシステム制作を担当しました。「ひと踏みで楽しさが芽吹く」をコンセプトに、子どもたちが体を動かしながら楽しめる体験型コンテンツです。
本プロジェクトでは、施設のリニューアルコンセプトや来館者層を踏まえ、体験全体の流れを設計するコミュニケーションデザインの視点から企画・制作を行いました。
■詳しくはこちら
駅前商業施設の体験価値を高めるインタラクティブコンテンツ制作
「#なるほど和小麦カフェ」イベント展示等を担当
敷島製パン株式会社様のブランド「Pasco」が、国産小麦を「和小麦」としてリブランディングするにあたり、認知獲得と理解促進を目的としたリアルイベント「#なるほど和小麦カフェ」を開催しました。展示物から手に取るパンフレット、ノベルティまで、ユーザーが展示全体を通して何を感じ、どのように理解していくかを重視したコミュニケーションデザインを設計しています。
「和小麦」に込められた想いやこだわりを、Pascoらしいあたたかく優しい世界観の中で表現するため、イラストやPOPなどのビジュアルトーンを統一。プロモーション初期段階でトーン&マナーを定めることで、その後の展開においても一貫した世界観づくりを可能にしました。
■詳しくはこちら
「#なるほど和小麦カフェ」イベント展示等を担当
コミュニケーションデザインを通じて、行動変容を起こす
単に情報を発信するだけなら、誰でも簡単にできる時代になりました。
そうして人々に届く情報量が膨大になっているからこそ、「人の記憶に残り、行動を変える情報」を届けることは、決して簡単ではありません。
今回解説したコミュニケーションデザインの5つのステップを踏んでも、思うような成果が出ないことはあります。しかしそれは失敗ではなく、次の一手を見つけるためのヒントです。重要なのは、「どこに課題があったのか」「次に何を改善すべきか」を振り返り、分析し続けること。
コミュニケーションデザインは、一度で完成するものではありません。振り返り、改善を重ね続けることこそが、ユーザーの行動を変え、ブランドの価値を育てていくのです。



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