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投稿日:2025.11.13 更新日:2025.11.14

ブランディングとマーケティング、どっちを先にやるべき?企業戦略の正しい進め方

「ブランディング」や「マーケティング」という言葉は広く使われていますが、「この2つの違いは何か」「どちらから取り組むべきか」と迷ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。多くの企業では、売上拡大を目的にさまざまなセールスプロモーションを推進していますが、自社の理念や価値観といったブランドの基盤が十分に整理されないまま進めてしまうケースも少なくありません。その結果、マーケティングの方向性が定まらず、期待した効果が得られないといった課題につながることも多くあります。

 

こうした課題を防ぐためには、ブランディングとマーケティングの正しい役割を理解し、それぞれを適切な順序で実行することが重要です。本記事では、両者の定義や違いを整理し、効果的に取り組むための考え方を解説します。

ブランディングとマーケティングの違い

ブランディングは「企業や商品の価値を社会に浸透させる活動」、マーケティングは「顧客ニーズを把握し、商品が売れる仕組みを構築するプロセス」という、それぞれ異なった意味があります。それぞれの意味について、詳しく見ていきましょう。

ブランディングの定義と役割

ブランディングとは、企業や商品の“らしさ”を明確にし、その価値を社会に伝えていく活動を指します。言い換えれば、自社の顧客となる人々に対して、「他社との違いや独自の魅力」を明確に示し、選ばれる理由をつくることともいえるでしょう。多くの競合が存在する中で、自社がどう見られるべきか、どう記憶されるべきか、という基盤を築くのがブランディングの役割です。

 

ブランディングは、以下のようなツールを用いて行うのが一般的です。

 

・ロゴ(CI/VI)

ロゴは企業やサービスの「顔」ともいえるものです。企業理念や創業者の思いを一つのロゴ(CI/VI)に落とし込み、視覚的なメッセージとして表現します。それにより、ブランドの世界観や価値観を短時間で伝えることが可能になります。さらに、ロゴを活用することで顧客の記憶に定着しやすくなり、ブランド認知や信頼性の向上にもつながります。そのため、ロゴの設計には単なる「見た目の良さ」だけでなく、企業の本質や長期的なビジョンまでを反映させる視点が求められます。

 

・ブランドブック

ブランドブックは、ブランドの理念・ストーリーを体系的にまとめたガイドラインです。関係者に一貫したブランドイメージを共有することで、媒体を問わず統一感のある表現を実現し、ブランド価値の向上に貢献します。また、新入社員や外部パートナーへの教育ツールとしても活用することで、ブランド理解の促進にもつながります。

 

・広告

消費者に対し、継続的にブランドイメージを訴求することで、ユーザーの記憶に残り「ブランドリフト(ブランドの想起)」を生み出すことができます。買い物の途中、何を買おうか迷った際に、CMや看板などの広告を思い出し、購入品を決めたことがあるという方も多いのではないでしょうか。継続的な広告はその結果として、購買意欲の喚起や企業の信頼性の向上につながることもあります。

マーケティングの定義と役割

マーケティングは、「顧客ニーズを把握し、商品が売れる仕組みを構築するプロセス」のことを指します。マネジメントの父とも呼ばれるピーター・ドラッカーが「マーケティングの目的は、販売を不要にすることだ」と語ったように、「売り込まなくても勝手に商品が売れていく仕組みをつくること」が、マーケティングの真髄であるといえます。

 

しかし、「勝手に商品が売れていく仕組み」をつくることは簡単ではありません。このようなマーケティング戦略を立案する際は、さまざまなフレームワークを用いて「内部環境(企業や組織の財務状況、従業員、内部プロセスなど)」と「外部環境(企業や組織を取り巻く、自社ではコントロールできない政治や社会などの流れ)」を分析し、その中で得られた結果をもとに、実現可能なマーケティング施策を立案していかなければなりません。

 

マーケティングの際に活用される、代表的なフレームワークを4つ紹介します。

 

・5フォース分析

5フォース分析は、企業を取り巻く競争環境を把握するためのフレームワークです。
「業界内競合」「買い手」「売り手」「代替品」「新規参入者」という5つの要因を分析することで、企業が外部からどのような脅威に晒されているのか明らかにします。競争優位性を見極める際の土台として活用されます。

 

・STP分析
STP分析は、競合との差別化を図り、効率的にマーケティング活動を展開するためのフレームワークで、以下の3つで構成されています。
Segmentation(セグメンテーション):市場を属性やニーズに基づいて細分化する
Targeting(ターゲティング):細分化した市場の中から狙う対象を選定する
Positioning(ポジショニング):選定したターゲットに対し、自社の立ち位置や提供価値を明確化する

STP分析により、誰に・何を・どう伝えるかの軸を整理することができます。

 

・3C分析

3C分析は、市場環境の中での自社の立ち位置や競争優位性を把握するためのフレームワークで、以下の3つを分析します。

 

Customer(顧客/市場):顧客ニーズや市場動向
Competitor(競合):競合の特徴や強み・弱み
Company(自社):自社の資源・強み・課題

 

3者の関係性を整理することで、自社が取るべき戦略の方向性を導き出すことができます。

 

・4P分析
4P分析は、自社の製品・サービスをもとにマーケティング戦略を具体的に設計するためのフレームワークで、以下の4つから検討をしていきます。

 

Product(製品・サービス):どんな価値を持つ商品・サービスか
Price(価格):どの価格帯で提供するか
Place(流通):どのようなチャネルで届けるか
Promotion(販売促進):どのように認知・購買を促すか

ブランディングで選ばれる理由を、マーケティングで届ける仕組みをつくる

ブランディングとマーケティングは、どちらか一方にだけ力を入れていても十分とはいえません。たとえば、ブランドとしての価値が高くても、マーケティングが弱ければ商品やサービスがなかなか知られず、ユーザーはより目に入りやすい他社を選んでしまいます。逆に、マーケティングで売れる仕組みを整えても、企業や商品のイメージが弱ければ、ブランド力のある競合に流れてしまう可能性があります。だからこそ、ブランディングで「選ばれる理由」を、マーケティングで「ユーザーに届く仕組み」をつくることが重要です。片方に偏るのではなく、それぞれの役割を理解し、組み合わせて活用することが必要です。

基本順序は「ブランディングが先、マーケティングが後」

企業が発信するメッセージには、一貫性が欠かせません。状況によって伝える内容がぶれてしまうと、誠実さに疑問を持たれ、不信感につながります。これを防ぐためには、まずブランディングから取り組むことが重要です。ブランディングによって自社の強みや価値を明確にし、それをユーザーに一貫して伝え続けることで、ブランドイメージが確立されます。そのうえで、マーケティングによって商品やサービスを売り出していくのが望ましい流れといえます。

なぜブランディングを先に行うべきなのか

ブランディングを先行して実施することで、企業の価値観や“らしさ”を明確にし、事業戦略やマーケティング施策に一貫した方向性を持たせることができます。また、従業員が自社の存在意義を理解し、共通の目的意識を持つことで、社内に一体感やモチベーションが生まれ、結果的にサービスや品質の向上にもつながります。さらに、「何を伝えるべきか」が明確になることで、メッセージが研ぎ澄まされ、ターゲットに対してより効果的に価値を届けることが可能になります。このようにブランディングによって土台を整えた上でマーケティングを展開することで、ブランドの価値向上や価格競争からの脱却、顧客ロイヤルティの向上といった成果を生み出すことができます。加えて、企業としての魅力が明確になることで、優秀な人材の獲得や定着にもつながるなど、長期的な経営基盤の強化にも寄与します。

 

 

ただし、マーケティングを行う際には「どの市場を狙うのか」「顧客ターゲットは誰なのか」といった視点が欠かせません。そして実際には、これらの視点はブランディングの段階から意識しておく必要があります。つまり、「マーケティングの視点を取り入れつつブランディングを行い、その後に本格的なマーケティングを展開する」というプロセスが、より現実的な進め方といえるでしょう。

ブランディングとマーケティングをかけ合わせて企業価値を高める

企業活動に欠かせないブランディングとマーケティング。ブランディングは「売れる理由」をつくり、マーケティングは「ユーザーに届ける仕組み」を担うという、それぞれの役割をしっかり分けたうえで戦略を立てることが大切です。

 

ただし、ブランディングを進める際にも、マーケティングの視点をある程度持っておくことを忘れてはいけません。両者を切り離すのではなく、うまく組み合わせることで、より高い相乗効果を生み出し、企業価値を一層高めることができます。

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