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投稿日:2023.11.17 更新日:2025.11.18

マーケティング戦略の重要設定|マーケティング戦略シリーズ (11)

マーケティング戦略を成功に導くためには、基盤となる3つの要素、すなわち「ポジショニング設定」「ターゲット設定」「商品・サービスのコンセプト設定」をしっかりと構築することが不可欠です。これらは、企業が市場での立ち位置を明確にし、顧客に対して独自の価値を提供するための指針となります。

 

市場は常に競争が激化し、顧客のニーズも多様化になります。その中で、企業が生き残り、成長を遂げるためには、単なる商品やサービスの提供にとどまらず、顧客に「選ばれる理由」を明確に示すことが必要です。本稿では、それぞれの要素の重要性と具体的な設定方法について解説します。これらの基本を押さえることで、戦略の方向性を明確にし、競争優位性を確立するための土台を築くことができます。

ポジショニング設定の意義と設定手順(独自の価値で選ばれる存在へ)

競争が激化する現代の市場において、顧客に「選ばれる理由」を提供することは、企業の持続的存続と成長に直結します。そのために必要なのが「ポジショニング設定」です。ポジショニングとは、顧客の心の中で自社の商品やサービスが、どのような位置づけで認識されるかを決定づけるものです。

 

例えば、同じような商品が複数存在する場合、顧客はどのように「選ぶ」のでしょうか?その答えは、「商品やサービスが顧客にとってどのような価値を提供するか」「その価値が他社とどのように異なるか」という視点によります。ポジショニングは、顧客の選択肢の中で自社の商品やサービスを無くてはならない「唯一無二の存在」として位置づけるための重要な戦略です。その意義は以下の3点に集約されます。

ポジショニングの定義

1.差別化と競争力の向上

競合他社との差別化を図り、自社の独自性(オリジナリティ性)を明確にすることで、顧客にとって魅力的な選択肢と
なります。これにより、競争力を高め、市場での存在感を強化します。例えば、価格競争に巻き込まれることなく、価
値を重視する顧客層をターゲットにすることで、安定した収益基盤を築くことが可能です。

 

2.一貫したメッセージの発信

明確化されたポジショニングは、企業のブランドイメージや個性が統一し、広告や販促活動全体に一貫性が生まれま
す。これにより、顧客の記憶に残る強い印象を与えることができます。一貫性のあるメッセージは、顧客との信頼関
係を築く上でも重要な役割を果たします。

 

3.ターゲットへの的確な訴求

理想の顧客層に響くポジショニングを選ぶことで、効率的にマーケティング活動を行うことができます。たとえば、特
定のライフスタイルや価値観を持つ顧客層に向けたメッセージを発信で、より深い共感を得ることができます。

ポジショニングの設定

ポジショニングを効果的に設定するためには、以下の手順を踏むことが重要です。

1.競合分析(ライバルの立ち位置を分析する)

競合他社がどのようなポジショニングで市場に存在しているのかを徹底的に調査します。これにより、自社との差別
化ポイントを明確にすることができます。競合の強みや弱みを把握することで、自社がどのような価値を提供すべき
かが見えてきます。

 

2.ターゲット層の特定(顧客像を明確化する)

自社の商品やサービスを提供する対象となる顧客層を特定し、そのニーズや課題を深く理解します。顧客像を具体的
に描くことで、より的確なポジショニングが可能になります。

 

3.独自の価値提案(独自の価値を創造する)

自社の強みや特徴を軸に、顧客にとって他よりも魅力的な価値を提案します。例えば、品質の高さやデザインの独自
性、または顧客サポートの丁寧さ、充実度、安心の対応など、他社にはない強みを打ち出します。

 

4.ポジショニングの選定(ポジショニングを明確化し発信する)

ターゲット顧客のニーズと自社の強みが合致するポジショニングを選び抜き、それを市場に対して明確に伝えます。
具体的なキャッチコピーやビジュアルを起用することで、顧客の記憶に残る効果的な発信が可能になります。

ターゲット設定の意義と設定手順

限られたリソースを最大限に活用し、広告や販促活動の効果を飛躍的に高めるためには、ターゲット設定が欠かせません。ターゲット設定とは、自社の商品やサービスを提供する理想的な顧客層を明確にするプロセスです。

例えば、すべての顧客に向けて同じメッセージを発信するのではなく、特定の顧客層に絞り込むことで、より深い共感を得ることができます。ターゲット設定は、単なる顧客の選定ではなく、企業のリソース(経営資源)を最大限に活かして、最も良い結果につなげるための戦略的な意思決定でもあります。その意義は以下の3点に要約されます。

ターゲット設定の意義

1.資源の集中投下

ターゲットを明確にすることで、人的・予算的リソースを最も効果的な層に集中させることができます。これにより、
無駄を省き、効率的なマーケティング活動が可能となります。たとえば、広告費を特定の地域や年齢層に集中させるこ
とで、より高い投資対効果を得ることができます。

 

2.共感を呼ぶメッセージの作成

ターゲットのニーズや特性に合わせたメッセージを作成することで、より深い共感を生み出し、自社や製品・サービス
の魅力を効果的に伝えることができます。顧客が「自分のための商品だ」と感じるようなメッセージは、購買意欲を大
きく高めます。

 

3.顧客満足度の向上

ターゲットの真のニーズに応える商品やサービスを提供することは、顧客満足度を高め、長期的な信頼関係を築くこと
が可能になります。高い満足を得た顧客はリピーターとなり、更には口コミを通じて新たな顧客を導く可能性も高まり
ます。

ターゲット設定の手順

ターゲットを効果的に設定するためには、以下の手順を踏むことが重要です。

 

1.市場のセグメンテーション(市場を細分化する)

最初に行うべきは、市場全体をいくつかのグループに分ける「セグメンテーション」です。年齢、性別、地域、所
得、価値観、ライフスタイルなど、さまざまな切り口で消費者を分類します。例えば、年齢で分ける場合は「20代」
「30代」「40代」などのグループ、価値観やライフスタイルで分けると「健康志向」「価格重視」「トレンド重視」
などのグループができます。このようにして、市場に存在する多様なニーズや特徴を持つ顧客層(セグメント)を
把握します。

 

2.セグメントの評価(有望なセグメントを見極める)

次に、細分化した各セグメントが自社にとってどれだけ有望かを評価します。評価の基準としては、セグメントの規
模(どれだけの人数がいるか)、成長性(今後の増加が見込めるか)、収益性(どれだけの利益が見込めるか)、競
争状況(競合がどれだけいるか、それは強いか)などがあります。理想的な例えですが、「規模が大きく、今後も成
長が期待できる、そのうえ競合が少ない」セグメントは非常に魅力的です。こうした分析を通じて、どのセグメント
に注力すべきか優先順位をつけます。

 

3.ターゲット層の特定(具体的なターゲット像を描く)

評価を基に最も有望と判断したターゲットのセグメントから、更に具体的なターゲット像(ペルソナ)を設定しま
す。ペルソナとは、ターゲット層を代表する架空の人物像で、年齢、性別、職業、年収、趣味、悩み、価値観など
できるだけ詳細に設定します。例えば、「30代女性既婚、パート主婦、年収○○○万円、健康志向で家計に敏感」な
ど、リアルな人物像を描くことで、ターゲットのニーズや行動パターンをより具体的にイメージできます。

 

4.ターゲットニーズの理解(ターゲットニーズを深掘りする)
最後に、設定したターゲット層がどのようなニーズや価値観を持っているのか、日常生活や購買行動の特徴などを深
く理解します。これには、アンケートやインタビュー、既存顧客の分析などが有効です。

 

ターゲットがどんな課題を抱えているのか、何を求めているのかを把握することで、最適な商品・サービスの提案や
効果的なプロモーション方法を検討できます。このような手順を踏むことで、単に「誰に売るか」だけでなく、「な
ぜその人たちなのか」「どんな価値を提供できるのか」までを明確にし、マーケティング活動の精度と効率を大きく
高めることができます。

 

また、ターゲット設定をしっかり行うことで、年齢、性別、興味関心、ライフスタイルといった具体的な顧客像が明確になるため、その顧客像に合致しない層への広告や営業活動を避けることができます。これにより、無駄な広告費や営業コストを削減できます。削減できたコストは、商品・サービスの品質向上や、より魅力的な価格設定、手厚い顧客対応といった、顧客にとって価値の高い部分に投資できるため、顧客満足度の向上につながります。

商品・サービスのコンセプト設(顧客の心を掴む、ただ一つのアイデア)

商品やサービスのコンセプト設定は、顧客に「欲しい!」と思わせる提案を生み出し、購買意欲を掻き立てるための重要なプロセスです。コンセプトは、単なる思いつきやアイデアではなく、顧客の心に響く「メッセージ」や「ストーリー」であり、競争の激しい市場で自社を際立たせるための鍵となります。その意義は以下の2点に集約されます。

コンセプト設定の意義

1. 顧客との深い共鳴

顧客が日常で感じている課題や、まだ自覚していない潜在的な欲求にしっかりと応えるコンセプトは、顧客の共感を呼
び起こし、それは共鳴へと変化し、強い信頼関係や愛着を生み出します。顧客が「自分のための商品だ」と感じること
で、ブランドへのロイヤルティも高まります。

 

2.際立つ個性と競争力

独自性の高いコンセプトは、数多くの競合商品と明確に差別化できるポイントとなります。そのため、顧客の記憶に残
りやすくなり、ブランドや商品としての確固たる地位を築くことができます。

コンセプト設定の手順

コンセプト設定の手順は以下の通りです。

 

1.顧客ニーズの洗い出し(顧客の「困った」を探る)

先ずは、ターゲットとなる顧客が日常生活や仕事の中でどのような悩みや不満、未充足の欲求を抱えているのかを徹
底的に調査します。アンケートやインタビュー、SNSの声などを活用し、顧客の「本音」を掘り下げます。

 

2.競合分析(競合の「打ち出し」を分析する)

次に、同じ市場に存在する競合他社や類似商品のコンセプトやアプローチ方法を調べます。競合がどのような価値を
訴求しているのかを分析し、自社がどこで差別化できるかを見極めます。

 

3.独自性の創出(オリジナルの「価値」を創造する)

顧客のニーズと競合の動向を踏まえ、競合にはない独自の強みや新しい価値を生み出します。例えば、技術力、デザ
イン、サービス体験、ストーリー性など、自社ならではのアプローチで、魅力を明確にします。

 

4.シンプルで伝わりやすい表現(「一言」で伝わる表現に磨き上げる)

コンセプトは、誰にでもすぐに伝わるシンプルで覚えやすいキャッチフレーズ(キャッチコピー)にまとめます。短く
端的な表現にすることで、顧客が商品やサービスの魅力を直感的に理解できるようになります。

 

5.顧客インサイトの活用(顧客の深層心理やニーズを掘り下げる)

顧客が感じている「困った」や「欲しい」といった表層的なニーズだけでなく、その奥にある深層心理や本当の願い
(顧客インサイト)を掘り下げます。インタビューや行動観察、SNSの分析などで得られた欲求(本音)をもとに、
顧客の心に響く価値提案へと落とし込みます。これにより、単なる機能やメリットの訴求を超えた、顧客の共感・共
鳴や信頼を獲得できるコンセプトが生まれます。

 

6.ブランドとの整合性

最後に、そのコンセプトが自社ブランドの価値観や、個性としっかり調和しているかを確認します。ブランドの世界
観やメッセージ、一貫性があることで、顧客に対して強い印象と信頼感を与えることができます

まとめ:戦略の骨格を定めるポジショニング、ターゲット、コンセプト設定の重要性

今回は、マーケティング戦略の根幹を成す「ポジショニング設定」「ターゲット設定」「商品・サービスのコンセプト設定」の重要性と、それぞれの具体的な設定や手順について解説しました。これら3つの要素は、単独で機能するものではなく、相互に連携しながら企業の成功を支える「戦略の骨格」を形成します。

 

市場は常に、競争が激化し、顧客のニーズも多様化しています。その中で、顧客に対して独自の価値を提供し、競争優位性を確立するためには、これらの戦略を適切に構築することが不可欠です。まず、ポジショニング設定では、競合との差別化を図り、顧客に「選ばれる理由」を提供することが求められます。次に、ターゲット設定では、限られたリソースを最も効果的に活用し、理想の顧客層に的確にアプローチすることが重要です。そして、商品・サービスのコンセプト設定では、顧客の心を掴む独自のアイデアを生み出し、購買意欲を高めることが鍵となります。

 

これらの要素を一つひとつ丁寧に練り上げ、実行に移すことで、企業は市場での競争力を高め、持続的な成長を実現することが可能になります。マーケティング戦略を成功に導くためには、これらの基本をしっかりと押さえ、常に顧客視点を忘れずに取り組むことが重要です。

 

マーケティング戦略シリーズの続きは以下をご覧ください。

第1章 企業や商品、サービスを魅力的に活かすマーケティングとは何か

第2章 マーケティング分析の概要と重要性

第3章 マーケティング手法の概要と選び方 1部

第3章 マーケティング手法の概要と選び方 2部

第3章 マーケティング手法の概要と選び方 3部

第4章 マーケティング戦略とは 1部

第4章 マーケティング戦略とは 2部

第5章 マーケティング戦略の構成要素 1部

第5章 マーケティング戦略の構成要素 2部

第6章 現状の問題点ならびにビジネス機会の洗い出しと課題設定

第8章 マーケティング コミュニケーション戦略の立案

第9章 マーケティング戦略の要点

第10章 まとめ

 

■マーケティングに関しては、こちらの資料もご覧ください

顧客を惹きつけ、成果を最大化するマーケティングコミュニケーション戦略の全貌と実践ガイド

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