TAKI Magazineー 制作における『知』を紐解く ー
企業価値を生み出すCIの3要素とは?その中でVIが果たす役割
ブランディング戦略の中でよく耳にする言葉のひとつに、「コーポレートアイデンティティ(Corporate Identity/CI)」があります。CIとは、企業理念やビジョン、価値観といった“企業の存在意義”を軸に、ロゴやマークなどを通して一貫したイメージを社会に発信し、企業の存在価値を高めていくための戦略を指します。
一方、「ビジュアルアイデンティティ(Visual Identity/VI)」という言葉もよく使われます。VIとは、ロゴやマーク、ブランドカラー、フォント、タグラインなど、ブランドを視覚的に表現するための要素のこと。これらの“視覚情報”は、企業やブランドの価値をわかりやすく可視化し、その本質を社会に伝える重要な役割を担っています。
ブランディングにおいては、ロゴやマークを軸に、広告・販促物・Web サイトなどのあらゆるツールにおいてビジュアルを統一することが、ブランドの世界観を伝え、イメージを浸透させる上で欠かせません。さらに VI は、外部への訴求にとどまらず、社内においても意識の統一や組織の活性化、従業員の帰属意識向上といった、ポジティブな効果をもたらします。
本記事では、CI を構成する 3 つの要素を整理しながら、その中でも特に VI が果たす重要な役割について解説します。
VI の前提となる “CI” とは
VI について解説する前に、まずはその前提となる CI(コーポレート・アイデンティティ)とブランディング戦略について整理しておきましょう。
企業戦略には、CI 戦略のほかに「ブランディング戦略」という考え方があります。ブランディングとは、企業やブランドのイメージを形成・向上させることで、競合との差別化を図り、市場での優位性を高める戦略で、”顧客視点”を基本としています。顧客ニーズを捉え、質の高い商品やサービスを提供することで、ブランドの価値を高めていくことを目指します。
一方で CI は、顧客視点を内包しつつも、出発点はあくまで企業理念=「企業のあるべき姿」にあります。そして CI は、「理念」「行動」「視覚」の 3 要素で構成されており、これらを意識的に統一・体系化することが重要です。

CI を構成する 3 つの要素、「MI」「BI」「VI」
CI は、「理念」「行動」「視覚」の 3 要素で構成されていて、「理念」は MI(Mind Identity/マインドアイデンティティ)、「行動」は BI(Behavior Identity/ビヘイビアアイデンティティ)、「視覚」は VI(Visual Identity/ビジュアルアイデンティティ)のことを指します。この MI・BI は、VI とも密接につながる要素の一つ。詳しく解説していきましょう。
MI(Mind Identity/マインドアイデンティティ)
MI とは、企業の根本的な考え方・在り方・存在意義などを明文化し定めたもの、つまり「企業理念」のことを指し、CI の構成要素の根幹になるものです。この企業理念は主に以下の 5 つの要素から成り立っています。
1. ミッション(Mission/使命)
ミッションとは、「企業が果たすべき使命」や、「社会・顧客に対して担うべき役割」を指します。これには、社会的なニーズとの適合性、企業の特性との一致、そして従業員一人ひとりがその価値を信じていることが不可欠です。さらにミッションは、ミッションステートメント(行動指針)として明文化し、従業員全員で共有することが重要です。近年は、ミッションと関連する概念として「パーパス」という言葉も注目されています。パーパスは、ミッションよりも広い視点で、企業の社会的な存在意義を示すものです。
2. ビジョン(Vision/志)
ビジョンとは、企業がなりたい将来像、なるべき姿を描き、社会的意義や貢献といった目的・目標を時間軸に沿って明確に示すものです。その到達点を全員で共有することで、信頼の向上や業務品質の向上につながります。
3. バリュー(Value/価値)
バリューとは、企業やブランドが社会に提供する独自の価値、つまり「強み」のことを指します。その強みを明確にすることで、従業員が同じ方向を目指し、一体感を持って行動できるようになります。
4. スピリット(Spirit/心がけ)
スピリットとは、ミッション・ビジョン・バリューの実現に向けて、企業内の一人ひとりが日々どのように考え、行動すべきかを示す指針のことを指します。
5. スローガン(Slogan/伝えたいメッセージ)
スローガンとは、企業やブランドのミッション・ビジョン・バリュー・スピリットを、短く分かりやすいフレーズで表現したものです。ターゲットや訴求内容によって、顧客向けか社内向けか、ミッションかビジョンかなど、作り方が変わってきます。共通して大切なのは、企業やブランドらしさをしっかり表現することです。このスローガンは、企業やブランドの認知を高め、興味や共感を生み出し、最終的に行動につなげる役割を持ちます。また、使い方や表現方法によって、以下のような呼び方があります。
・タグライン
ロゴとともに外部へ発信するフレーズ。
・コーポレートステートメント
企業が社会に提供する価値や方向性を文章化したもの。
・ブランドステートメント
企業やブランドの立ち位置を簡潔にまとめたもの。
・コーポレートメッセージ
社内外で日常的に伝える、親しみやすい言葉で表現されたもの。

BI(Behavior Identity/ビヘイビアアイデンティティ)
BI とは、MI(企業理念)を具体的な行動として示すための施策・指針のことです。その企業にふさわしい従業員の態度や行動をルール化するもので、「行動規範」とも呼ばれます。BI は、コンプライアンス・人権・労働・職場環境なども含めた行動基準を明確にし、企業のあるべき姿を示します。
行動規範があることで、個人・部署・組織全体の方向性が統一され、従業員が迷ったときの原点回帰の指標になります。特に B to C 企業では、顧客への適切な対応が企業イメージの形成に直結するため、ブランディング効果にもつながります。またこうした行動の徹底は、従業員の企業理解や信頼、満足度・意欲の向上を促し、結果として企業の成長・発展にも寄与します。
VI(Visual Identity / ビジュアルアイデンティティ)
VI とは、企業理念を象徴的に視覚化するデザイン要素の総称です。代表的な例として、企業やブランドのロゴが挙げられます。VI は、企業の価値やコンセプトを可視化し、メッセージを伝える役割を持ち、幅広い人々に共通したイメージを与えることができます。そうして MI・BI・VI の 3 つの要素を統一することで、企業イメージが形成され、ブランド力を強化することができます。
このほかにも、近年では企業が提供するあらゆる顧客体験に一貫性を持たせ、包括的に設計する戦略として、XI(Experience Identity/エクスペリエンスアイデンティティ)も注目されています。
VI で CI を可視化。ブランド確立の強力ツール
CI は、MI・BI・VI の 3 つの要素で構成されます。このうち VI は、MI(企業の思いや理念)を視覚的に表現する役割を担い、ロゴやシンボルマーク、色、フォント、レイアウト、タグラインなど、企業の “らしさ” を可視化した視覚要素全般を指しますVI は単なる見た目の統一ではなく、理念を視覚に落とし込むことが本質であり、適切なデザインの開発や設計によって、企業やブランドの魅力を最大限に引き出すことができるようになります。また、使用ルールをまとめた「VI ガイドライン」を設けることで、広告・販促物・Web サイトなど社内外でブランドイメージを統一し、強固なブランドの確立につなげることが可能です。
さらに VI は、社内においても重要な役割を果たします。視覚的な統一により従業員の意識が揃い、組織の活性化や帰属意識の向上にもつながります。つまり、VI は企業内外でブランド価値を確立・強化する中核的な要素と言えるのです。
VI を活用したブランド戦略で他社と差をつけられる
VI を効果的に活用すると、企業やブランドの世界観が明確に可視化され、認知や共感が高まることでブランド力の向上につなげられます。そしてブランドの世界観を統一することで、与えるイメージをコントロールしやすくなり、感性に訴えかける力も強まります。その結果、顧客の共感が生まれ、自然と認知度が高まり、コミュニケーションの円滑化や施策の浸透力向上にも寄与していくのです。
さらに、VI によって独自のアイデンティティをビジュアルで表現することで、競合他社との差別化を実現し、独自性と優位性を確保することもできます。こうした差別化は顧客からの信頼感や共感を深め、ロイヤリティ(Loyalty)の向上にも直結します。加えて、ブランドの世界観を統一することは社内にも良い効果をもたらします。統一された VI を日常的に目にすることで、従業員の共通認識や意識の統一が進み、組織の活性化やインナーブランディングの浸透にもつながります。
もしブランディング戦略にお悩みがあれば、VI の強化と活用を強くお勧めします。VI を磨き上げ、うまく活用すれば、顧客との間に深い共感と信頼を生み出し、激しい市場で自社だけのユニークな価値を確立する強力な武器になります。
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