TAKI Magazineー 制作における『知』を紐解く ー

投稿日:2025.10.27 更新日:2025.10.27

リブランディング入門(後編)

成功事例の紹介

ここからは、リブランディングに成功した企業の具体的な事例をいくつか紹介します。以下の企業は、ブランドの価値を再定義し、顧客との関係を強化することに成功しました。

 

Apple

1990年代後半、Appleは経営危機に直面していましたが、スティーブ・ジョブズ氏の復帰により大規模なリブランディングを実施。新しいロゴと「Think Different」キャンペーンを通じて、Appleは単なるコンピュータメーカーから、革新とクリエイティビティの象徴へと変貌を遂げました。このキャンペーンでは、消費者に「異なる考え方」を促し、Apple製品を使うことが特別な体験であると認識させることに成功しました。

 

スターバックス

2011年、スターバックスはロゴから「Coffee」の文字を削除し、シンプルなセイレーンのデザインに変更しました。この変更は、コーヒーだけでなく、さまざまな飲食体験を提供するブランドへ進化したことを示しています。店舗のデザインも見直され、居心地の良い空間を提供することで、ブランド価値の回復と顧客のロイヤルティを高めることに成功しました。

 

湖池屋

2016年、湖池屋は「KOIKEYA PRIDE POTATO」というプレミアムポテトチップスを発売し、ブランドのイメージを刷新しました。高品質な素材を使用し、パッケージデザインも一新。これにより、売上は前年比で大幅に増加し、ブランドの地位を確立しました。

 

失敗事例の紹介

リブランディングは、ブランド価値の回復や地位の確立を実現する一方で、相応のリスクも伴います。以下は、リブランディングの失敗事例。どのような結果になってしまったのか、見ていきましょう。

 

(1)顧客の声を無視した変更

ある飲料メーカーが、長年愛されてきた製品の味やパッケージを、十分な市場調査なしに大幅に変更しました。既存の顧客からは「以前の方が良かった」という声が相次ぎ、SNSでは批判的な意見が拡散。結果として、顧客離れが進み、売上が低迷する事態となりました。顧客の愛着や期待を軽視した変更が、ブランドの信頼性を損なったのです。

 

(2) 不十分な市場調査

別の企業では、顧客のニーズを十分に理解せずにリブランディングを実施。その結果、新しい製品が市場で受け入れられず、売上が低迷しました。顧客の期待に応えられなかったことが、失敗の原因となりました。

 

(3) コミュニケーション不足

ある企業は、リブランディングの理由や新しいブランドの価値を顧客に十分に伝えなかったことで、顧客は混乱し、ブランドへの信頼を失う結果に。透明性の欠如が、ブランドの評価を下げる要因となりました。

成功と失敗から学べるポイント

ベネフィットとリスクの両方を持つリブランディングですが、それぞれの事例から得られる教訓は多くあります。以下に解説していきましょう。

 

【顧客の声を重視する】

リブランディングを行う際には、顧客の意見やニーズをしっかりと把握することが重要です。顧客の期待に応えることで、ブランドへのロイヤルティを高めることができます。

 

【変更スピードの適切な判断】

リブランディングの進め方は、目的と状況によって使い分けることが重要です。

  • 段階的な移行が有効なケース:ビジュアルアイデンティティ(ロゴ・パッケージ等)の変更では、新旧デザインを併用する期間を設けることで、顧客が新しいブランドに慣れる時間を確保できます。
  • 明確な決別が有効なケース:ネガティブなイメージの払拭が目的の場合や、全く新しい価値を打ち出す場合は、旧ブランドとの違いを明確にすることが求められます。

顧客の混乱を最小限に抑えながら、リブランディングの目的に応じた適切な移行戦略を選択することが成功の鍵となります。

 

【明確なコミュニケーション】

リブランディングの理由や新しいブランドの価値を顧客にしっかりと伝えることも重要です。透明性を持ったコミュニケーションが、顧客の信頼を築く基盤となります。

 

失敗を防ぐためのリスク管理

リブランディングのリスクを管理するためには、以下のポイントに注意するようにしましょう。

 

(1) フィードバックループの構築

顧客からのフィードバックを積極的に収集し、改善に活かす仕組みを作成。顧客の声を反映させることで、ブランドの方向性を適切に調整できます。

 

(2) テストマーケティングの実施

新しいブランドや製品を市場に投入する前に、小規模なテストを行い、顧客の反応を確認。これにより、リスクを最小限に抑えることができます。

 

(3) 社内の理解促進

リブランディングの目的や戦略を社内で共有し、全員が同じ方向を向くことが重要。従業員の理解と協力が、リブランディングの成功につながります。

これらの教訓を踏まえ、次はリブランディング実行後の効果測定と継続的な改善について見ていきましょう。

 

効果測定の方法

リブランディングの効果を測定するためには、以下の指標を活用します。

 

(1) 売上

リブランディング後の売上の変化を追跡することは、最も直接的な効果測定の方法です。売上が増加すれば、リブランディングが成功した可能性が高いと判断できます。

 

(2) 顧客満足度

顧客満足度調査を実施し、リブランディング前後での顧客の意見や感情の変化を把握。NPS(Net Promoter Score)を用いることで、顧客がブランドを他者に推薦する意向を測定できます。

 

(3) 認知度

ブランドの認知度を測定するために、広告キャンペーン前後でのブランド名や製品名の検索数を比較します。また、SNSでの言及数やフォロワー数の変化も重要な指標。これらの指標を定期的に確認することで、リブランディングの効果を継続的に評価し、必要に応じて戦略を見直すことができます。

 

フィードバックの収集方法

リブランディング後のフィードバックを収集する方法は多岐にわたります。代表的なものを以下に紹介します。

 

(1) 顧客からのフィードバック

アンケートやインタビューを通じて、顧客の意見を直接収集します。特に、リブランディング後の印象や期待に関する質問を設けることで、顧客の反応を具体的に把握できます。

 

(2) 従業員からのフィードバック

社内での意見交換やワークショップを通じて、従業員の声を反映させることも重要です。従業員がブランドの価値を理解し、実践することが、リブランディングの成功につながります。

 

(3) SNSの活用

ソーシャルメディアを通じて、顧客の反応をリアルタイムで把握することができます。SNS上でのブランドに対する言及や評価をモニタリングし、トレンドを分析することで、顧客のニーズを把握できます。

 

リブランディング後の課題解決

リブランディング後には、いくつかの課題が発生することがあります。それらを見越し、次なる対策を用意しておくことが大切です。

 

(1) 顧客の混乱への対応

新しいブランドイメージに対する顧客の混乱を防ぐためには、明確なコミュニケーションが必要です。リブランディングの理由や新しい価値を顧客にしっかりと伝えることで、混乱を最小限に抑えることができます。

 

(2) 新ブランドイメージの浸透

リブランディングの目的に応じて、適切な浸透戦略を選択します。旧ブランドとの連続性を保ちながら進化を示す場合と、明確に新しい方向性を打ち出す場合では、アプローチが異なります。広告やプロモーションを通じて、新しいブランドの価値を継続的に発信し、市場での認知を高めることが重要です。

 

継続的な価値向上のための施策

リブランディング後も、企業は継続的に価値を向上させるための施策を講じる必要があります。

 

(1)  戦略の見直し

市場環境や顧客ニーズの変化に応じて、リブランディング戦略を定期的に見直します。新たなトレンドや競合の動向を把握し、柔軟に対応することが求められます。

 

(2) マーケティング施策の強化

リブランディング後のマーケティング施策の強化とブランドの認知度を高めるための活動を継続。デジタルマーケティングやSNSを活用し、ターゲット層に向けた効果的なプロモーションの展開が必要です。

 

(3) 顧客との関係構築

顧客との関係を深めるために、定期的なコミュニケーションやイベントを通じて、ブランドへのロイヤルティを高める施策を実施。顧客の声を反映させることで、ブランドの信頼性を向上させることができます。

 

まとめ

リブランディングは単なる一時的な施策ではなく、企業の持続的な成長を支える重要な戦略です。効果測定やフィードバックの収集を通じて、リブランディングの成果を評価し、課題を解決することが求められます。

継続的な価値向上のための施策を講じることで、ブランドの競争力を維持し、顧客との関係を深めることができるのです。リブランディングは、企業の未来を切り開くための重要なプロセスであり、長期的な視点と顧客視点で取り組むことが成功の鍵となります。

 

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