TAKIブログ
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こんにちは。たきブログ編集部です。先日、弊社のデザインについて考えるカンファレンス「たきコーポレーションデザイン戦略2025」を実施しました。当日は株式会社ビビビット代表取締役の小宮大地氏、Accenture Song Droga5 Tokyoコピーライター・サービスデザイナーの阿部菜々子氏もゲストで登壇。今回は、カンファレンスで話された内容を一部抜粋しつつ、たきコーポレーションのデザイン戦略についてご紹介します。

(左から)株式会社ビビビット 代表取締役 小宮大地氏/Accenture Song Droga5 Tokyo コピーライター・サービスデザイナー 阿部菜々子氏/株式会社たきコーポレーション 取締役・CDO 藤井賢二
たきコーポレーションのデザインと、デザイン戦略
カンファレンスの冒頭では、当社取締役 CDOの藤井より、たきコーポレーションが描くデザイン戦略の概要について説明を行いました。
藤井:デザイン戦略とは、企業や組織の⽬標達成のために、デザインの⼒を意図的かつ体系的に活⽤する戦略的アプローチのこと。ここでいうデザインとは、単にプロダクトデザインやグラフィックデザインだけを指すのではなく、サービスデザイン、ブランド体験、ユーザー体験(UX)など、広範な領域を含んでいます。そしてデザインとは、単に「⾒た⽬を美しく整える」ことをいうのではありません。その本質は、課題を解決するための設計⾏為。つまり、「誰のために」「何を」「どのように」つくるかを考え、形にしていくプロセス全体を指して、デザインと呼びます。言い換えるならば、デザイン=設計であり、デザイナー=設計者と言えるでしょう。
では、たきコーポレーションのデザインとは一体何なのでしょうか。藤井は以下のように語ります。
藤井:たきコーポレーションのデザインとは、「機能を設計する」「審美性を設計する」「体験を設計する」の大きく3つに分けることができ、その3つを通じて「⼈の思いをカタチにする⾏為」と定義されます。
これらを踏まえて掲げられたのが、
『THINK DESIGN 考えよう、デザインの⼒。 動かそう、その先の世界』
という戦略スローガン。
そして、
①:2030年にたきコーポレーションが提供するデザイン価値の設定
②:2030年の提供価値実現に必要な組織体制
③:クリエイティブ職種の教育方針
④:クリエイティブに関連する人材の採用・および提携方針
という4つのテーマです。

「たきコーポレーションデザイン戦略2025」の様子
2030年の予測とたきコーポレーションに求められること
「①:2030年にたきコーポレーションが提供するデザイン価値の設定」について、中でも注目度が高いトピックの一つが、AIの台頭です。2027年には人間レベルの汎用人工知能(AGI)が誕生するという予測があるなど、その動向にはこれまで以上に関心を持っておかなければなりません。ゲスト登壇者の小宮氏、阿部氏の両名は、既に事業においてAIを活用するシーンも増えてきていると言います。
小宮:私たちは社内に開発チームを擁しており、特にエンジニアリングにおけるAIへの興味関心度は高いですね。最近では人の手を借りずともコードが書けるAIなども出てきており、場合によっては人件費よりもAI投資の方が費用対効果の高い領域があるのではないかという意見も出てきています。
阿部:当社ではほとんどのメンバーがAIを使っていると思います。特にクリエイティブの分野においては、壁打ちのように使うケースが多いですね。私はコピーライターが本職なので、言葉を散らす際にAIを使っています。考えたことをメモに書いてAIに投げると、パワポの資料のようにまとめてくれるんですよ。もちろん、それで完成とは行きませんが、たたき台があることでアイデアが進みやすくなるので、効率面でもメンタル面でも役立っています。
たきコーポレーションにおいても、AI活用の幅は徐々に広がっており、その流れは今後ますます加速していくでしょう。プロの知見がなくとも、誰でもデザインを嗜むことができるようになった時、デザイナーの未来はどのように変化していくのでしょうか。
阿部:近年では、メーカーなどでも自社内にクリエイティブ担当を持つ企業も増えてきており、ビジネスを動かすためには心を動かすことが必要、という認識が強まってきています。AIによる業務効率化はもちろんですが、それらも活用しながらどう人の心を動かしていくのか、それができる人材はいるのか、という議論が増えていくように思いますね。
小宮:弊社が運営しているデザイナーと仕事のマッチングプラットフォーム「ViViViT」においても、求められるデザイナーの人材要件に少しずつ変化があり、単にビジュアルをつくるデザイナーの必要絶対数は、減少していくのではないかと感じています。一方、AIにできないことができる、AIを駆使してより価値を発揮できるデザイナーの市場価値は、今後高まっていくのではないでしょうか。これまで以上にビジネスの上流で成果を発揮できるデザイナーやAIの専門性の高さを強みとするデザイナーが主流になっていくのではないでしょうか。
激しく変化する社会情勢に、AIの台頭、顕在化する社会課題を踏まえ、デザイン戦略チームでは、2030年にたきコーポレーションが提供するデザイン価値を、以下のようにまとめました。
『たきコーポレーションは企業や組織からの「社会課題解決型商品やサービスのクリエイティブ、未来志向のプロジェクト」に必要な⼈材を提供する企業として社会的価値を発揮します。単なる制作会社から価値創出のパートナーへと役割が進化していくなかで、それらを加速するためにもジョブ型雇⽤やリスキリングを進め、変化対応⼒を重視していきます。』
また「②:2030年の提供価値実現に必要な組織体制」について、たきコーポレーションでは、企業は新しいデジタル社会の新しいインフラや商品を構築、 運⽤、販売するためのプロジェクトチームを⾛らせる必要に迫られると予測。アジャイル型でプロジェクトを進行させたいというニーズが高まるため、高い専門性を持ちつつも柔軟な働き方ができるクリエイターや、広く浅い専⾨性とマネジメント⼒、⼈脈でプロジェクトを推進するプロジェクトマネージャー的な⼈材の需要が拡大すると考えます。
だからこそ、デザイン戦略チームでは、2030年の提供価値実現に必要な組織体制を以下のようにまとめました。
『2030年に近づくにつれ、企業の内外の境界が曖昧になり、越境的に協働するチーム構成が増加していくでしょう。デザイン会社はこうしたネットワーク型の価値創造の中⼼的存在として期待されており、単なる受託ではなく共創パートナーとしての⽴ち位置が重要視されていくでしょう。』
多様なニーズに応えることができる人材を育てていく
「③:クリエイティブ職種の教育方針」については、2030年の予測や提供すべき価値、それに合わせた組織体制を踏まえて、改めてたきコーポレーション全体の現状スキルに関する調査を実施。その結果について、藤井は以下のように語ります。
藤井:制作職の保有スキルベスト10を抽出すると、ほぼ全制作職がグラフィックデザインできるという結果に。これは当社にとって非常に誇らしいことだと考えています。その他の上位スキルに関しても、ビジュアル制作スキルが並んでおり、ここは間違いなくたきコーポレーションの強みであり、特徴と言えるでしょう。しかし一方で、それらに偏ってしまっているという現状もあります。求められるさまざまなニーズに応えていくためには、多様なスキルを持った人材を増やしていく必要があるでしょう。
これらを踏まえ、デザイン戦略チームが出したクリエイティブ職種の教育方針については、以下の通りです。
『2030年に向けて、たきコーポレーションでは次のような2つの⼈材を増加させていきたいと考えています。ひとつは、⾃⾝の専⾨領域を深化させ、⾼度な審美性や企画⼒を磨く人材。次にAIやデータ、さまざまなクリエイティブを理解し、プロジェクトとクリエイティブ職をつなげるディレクター職。この専⾨性と横断的知識が、変化の激しい社会において⾼いニーズを持つクリエイティブ⼈材と考えています。』
こうして幕を閉じた「たきコーポレーションデザイン戦略2025」。しかしたきコーポレーションでは、今回示したデザイン戦略を形骸化させないよう、経営戦略にきちんと組み込まれていくための制度をつくり、今後も戦略的に未来へ歩んでいきます。
デザイン会社の未来について、語り尽くすことはできないテーマと話題に満ちたたきコーポレーションのデザイン戦略会議、最後は藤井が以下のように締めて閉会しました。
藤井:今回は「たきコーポレーションデザイン戦略2025」にご参加くださいましてありがとうございました。2025年は創立65年という節目であると同時にクリエイティブ界隈においては生成AIの台頭が目覚ましい年となりました。このようなまさに激動の中、私自身もデザイナーとして2001年の入社以来、たきコーポレーションの変化を24年間見続けてきました。2000年当時はまさに手作業での版下作成からMacintoshでの版下作業に切り替わろうとしている時期。急いで全社員にMacを支給せねば!と動く中、Macの作業を覚える社員、それを拒否する人、新しい時代の波に乗り遅れまいとする姿がありました。
その後もインターネット、スマートフォン、そしてAIと私たちのクリエイティブに求められる環境は常に進化してきました。今回のAIによる盛り上がりも3年後にはどうなっているかわかりません。それでも私たちは時代に合うデザインの力を最大限に活用しながら、社会をよりよい方向に導いていかなければと考えています。
今回のようなゲストをお招きして議論することも、「デザインについて考える」貴重なきっかけになりました。これからも多くのみなさんとデザインについて考え、深めて参りたいと思います。本日はありがとうございました。
