みらいデザインミーティング#002 経師4

4本足の伝統技術に、デザインの持つ1本足の美しさを

4本足の伝統技術に、
デザインの持つ1本足の美しさを

大入:でも「八千代綴り」もこれからつくるものも、プロダクトとして生活の中で機能させることを考えると、課題はたくさんあります。一般家庭の中で取り入れてもらいたいですね。

長山:一般家庭に入っていくチャンス、まだまだあると思います。ものを持っていることが豊かさだった時代から、今は余計なものは持たないという方にシフトしています。でも、子供の撮影スタジオに行くと結構これが高いんだけれど、それでも親は子どもの記念を残したいからと払うんですね。これはと思うものは大事にするし、お金も払う。その中に入ることができるかが、鍵だと思うんです。

大入:そういうお客様の需要をどう掘り起こしていくか、買いたいという気持ちになっていただけるか…。

長山:どう世の中にそれを発信していくか。まだまだ挑戦は続きますね。

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大入:私は会社の中で、自分はとかげの尻尾くらいのポジションだと思ってるんです(笑)。いざとなったら、自分が悪評をかぶればいい。他の人は前に進めるはずだから。そのくらいの覚悟を持って、とにかくできることはやってみようと思うんです。

長山:僕もこれから「八千代綴り」を商品として成長させるのと同時に、これを土台に、今後一緒にできるプロジェクトがまた生まれたらいいなと思っています。

大入:うれしいですね。経師の仕事や伝統について、父は「つぶれたらそれはもう、時代にいらんもんなんや」って。まったくそうだと思うんです。その上で、私達は経師の仕事は現代社会にとって確かに必要なものだと信じています。ちゃんと経師のできることに価値が見出せるのであれば、皆さんのお力もお借りして、今の産業として、これらのプロダクトを日常に息づかせる道筋を探していきたいと思います。

長山:そうなっていったときには、若いデザイナー達にも参加してもらえたらと思います。僕自身、普段触れられない伝統を身近に感じたり、デザインが果たす役割を意識できてほんとに良かったと思っているので、彼らにもそれを体験してほしいんです。きっとアウトプットのクオリティも上がってくるだろうと思います。

大入:これは私のイメージなんですけど、クリエイティブなものってセンシティブで不安定なものやと思うんですね。4本足ではなく、1本足。そのほうが美しい。バレエとかもめちゃくちゃ無理な体勢で踊るじゃないですか。やっぱり不安定なのに成り立っている凄さが、アーティスティックなものの素晴らしさだと思うんです。でも、私達は職人、クラフトの分野の人間です。それはちゃんと4本足で立っているものを作るのが仕事になります。そこを打ち破ろうとして実用性や品質が下がってしまったらいけないんです。だからうまくデザインの持つ1本足の美しさをとりいれていく、お互いの力を出し合っていけるのが理想かなと思います。

長山:僕にとってのデザインは、新しい商品やサービスをより深く知ってもらったり、それを使うことによって、より豊かになる生活を想像してもらうきっかけを作るもの。企業が伝えたいことを、分かりやすく代弁する存在です。でも今の言葉を聞くと、デザインの役割もスケールが広がってうれしいですね。

大入:本当ですよ。歴史や伝統を今の社会にフィットするようにするわけですから。


大入 祥平

SHOHEI OIRI

大入 祥平

京都府京都市出身。「経師」という和本製作の専門職を今に引き継ぐ株式会社 大入に営業担当として勤務。昔ながらの仕事も守りながら、現代社会において活用されるための企業の在り方について模索する。自らが講師役を務める、和本に関する講義やワークショップ等も各地で展開。

長山 大樹

HARUKI NAGAYAMA

長山 大樹

バンタンデザイン研究所卒業。2004年株式会社 たき工房入社。アートディレクターとして、グラフィックからデジタル、ムービーまで幅広い領域で様々な広告プロモーションに携わる。同社のプロダクトブランド「TAKI PRODUCTS」の中心メンバーとしても活動。また、日本の木材を使用した日々の生活を豊かにするプロダクトブランド「Wood market soo soo」も主宰。

対談を終えて〜長山の眼

僕は新しいことにチャレンジするのが好きだし、そうしていかないと、これからの時代、デザインで課題を解決できなくなってしまうんじゃないかという危機感も強く持っています。なので大入さんのチャレンジする姿勢にあらためて共感しましたし、そういう精神を持っている人と高め合いながら作業ができることをうれしく思いました。
また、商品を世の中に発信していくにあたっては、デザインって大事なんだっていうことをあらためて認識させてもらい、自信と責任をより強く持つことができました。
もうひとつの収穫は、立場を超えてものづくりができたことです。制作スタッフともクライアントさんとも、チームメイトとして意見が出し合える関係づくりを心がけて、ときには、その商品やサービス、企業の課題となっている部分まで、気をつかわずに話し合えることの大切さを知りました。今後の大入さんとのプロジェクトにはもちろん、その他の仕事でも、こういった経験を活かして、いつまでも必要とされるクリエーターを目指したいと思います。

《商品紹介》

対談のきっかけとなった和本装丁のフォトアルバム「八千代綴り」は、株式会社大入とTAKI PRODUCTS(運営:株式会社たき工房)の共同開発商品です。
経師の技術で、何世代にもわたり思い出を受け継げる保存に特化したフォトアルバムです。

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▼ 「八千代綴り」が京都デザイン賞で京都新聞賞を受賞
https://www.taki.co.jp/news/information/yachiyotuzuri10/

▼ 「八千代綴り」の詳しい情報はこちら
http://yachiyo-tsuzuri.com