みらいデザインミーティング#002 経師3

若い人たちに、良いものと触れ、生活が豊かになる体験を

若い人たちに、良いものと触れ、
生活が豊かになる体験を

大入:製品を買っていただくために、プロデューサーとしてもうひとつ考えなければいけないのは、どうしたらお客様が良いものに価値を見出してくださるようになるか。押し付けとか洗脳になってはいけないので難しいですけど。

長山:そうですね。展示商談会でも、クオリティの良さをわかってくださるのは年配の方が多かったのですが、若い人たちにもわかってもらえたらうれしいですね。

大入:とくにバブル期を経験した方は、お金をどうかっこよく使うかを考えていたり、いいものに触れたりしていたから、目が肥えている人も多いんです。今はどうしたらちょっとでも払わんで済むかっていう人が多い。最近よく聞くのが、御朱印帳も安価なものを何冊も持って、お友達とシェアして、自分のかわりに押してきてもらったり、それをネットで売ったりという事が流行っているそうですね。でもちゃんと本来の意味を知って、人生の大切な記念として御朱印をいただこうっていう気持ちになれば、いいものがほしくなると思うんですよね。

長山:世の中が便利になった分、本当に良いものに触れる機会が減ってしまったのもひとつの要因じゃないかと思います。良いものを取り入れることで、生活が豊かになるという体験をしてもらう機会も必要かもしれないですね。

大入:そうですね。実は「日本文化について学ばせたい」というコンセプトのもと、子供や学生達に話してほしいというご依頼をよくいただくんです。テーマは和本に関してですが、良い品はちゃんとメンテナンスをして永く使えること、使えば使うほど使用者に馴染んで、より良いものとなっていくことなどを、随所に織り交ぜて話しています。体験教室とかも、きっかけがあれば開いてみたいなと思っているんですけど。

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長山:話すときに大事にされてることってありますか。

大入:「みんなの生活の中に、日本文化はちゃんと息づいてるんだよ」ってわかってもらうことでしょうか。日本の工芸品の良さって、それぞれの素材の特性を知って、それらが一番活きるところにエスコートすることだと思うんですね。異素材のものが、調和をもってそこにおさまっていることの大切さ。それはそのまま人間関係にも言えるよねって。
あとは多角的なものの見方を培うきっかけにもなります。古いものの真贋を判断するときに、書かれている内容ではなくて、紙のほうを見るとわかるときがあるんです。書いた人の位とか相手との上下関係とか。

長山:うちの子供にも聞かせたいな(笑)。

大入:ものづくりに興味や理解を持ってくれている人たちが育てば、仕事もいい形でできると思うんですよね。お客様と今何をやっているのかっていう共通意識を持つことがすごく大事だと思うので。

長山:発注する側、される側、という距離を作っちゃうんじゃなくて、1個のものをきちんと直すっていうプロジェクトを一緒にやれるチームのような関係づくりができると理想的ですよね。デザインも、オリエンテーションの段階からざっくばらんにディスカッションできて一緒に戦っていけると、いいものが生まれやすいなと思います。

大入:逆に馴れ合いになってはいけないところもありますよね。「八千代綴り」でそうしたように、分担するべきところはきちんと分担して、かつ一緒にプロジェクトに臨めたら、最大限のパフォーマンスを発揮できると思います。