みらいデザインミーティング#002 経師2

新たな道筋の開拓は、人生をかけてチャレンジするべきことのひとつです

新たな道筋の開拓は、
人生をかけてチャレンジするべきことのひとつです

長山:多くの伝統産業では後継者不足が課題になっていますが、こちらには若い職人さん達もたくさんいらっしゃるんですね。

大入:ありがたいことに、募集をかけるとけっこう来てくれるんです。それはやはり、今は美術館、大学図書館や出版社などからのお仕事があって、食べていける会社であるというのが大きいと思います。やっぱり普遍的に報酬として約束できるのは、お金なんですよね。でも今後のことはわかりませんし、もっと生活の中にも息づきたい。なので、これからの伝統産業においては、職人の方達に存分に腕をふるってもらえる道筋を開拓できる人がいないといけないと思うんですね。国も後継者を育てる学校をつくったからといって、仕事を探してくれるわけではありませんし。

長山:技術は技術で大事だけれども、それが届く場所をつくるという役割が必要ということですね。

大入:そうです。とくにこれからは。でも職人である父は「そういうことを考える人間は職人にはなれへん」と。それを職人がやったら在り方にブレが生じて、クオリティが下がっちゃうかもしれない。自分の培ってきたことをあますことなく体現することが職人の使命でもあり、醍醐味なんですね。なので私は営業職に就いて、むしろ伝統産業の新しい展開を生み出していけるプロデューサーになれるように、今、修行を積んでいるつもりです。新たな道筋の開拓は、人生をかけてチャレンジするべきことのひとつかなと思っています。

長山:僕自身もデザイン作業そのものより、デザインが価値や効果を発揮できる道筋を開拓することに、意識的に時間を割くようになってきました。制作にあたってくれる若いデザイナーたちもモチベーションが高く、楽しんでやってくれているのがうれしいです。

大入:うちの職人たちもやる気満々なので、ほんとにありがたいです。お互いが無茶言い合わないといけないときもありますから、こういう目的とコンセプトのもとに作ってますよ、という説明はちゃんとするようにしています。敬意を払うことは大事ですよね。媚びへつらってしまったら、それはかえって不信感を生んでしまうと思いますけど、相手のことをちゃんと理解せなあかんなとは思ってやっています。

長山:プロジェクトを進める中で印象的だったのは、職人のみなさんの動きの美しさでした。プロモーション動画のためにお父様を撮影させていただいたときも、仕事場を見せていただいたときも感じたのですが、無駄がなくて、リズムがあって、音を聞いていても見ていても気持ちいい。作法の美を感じました。

大入:父の教えの中に「早く、丁寧に、美しく」っていうのがあります。難しいことを簡単そうにできるようになって一人前と。

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長山:みなさんは専門の学校を出ているんですか?

大入:いえ、その必要はなくて、ここで仕事をしながら学んでいきます。学術的なアプローチと、実際のアプローチはけっこう違ったりもしますし。ただ最近は、お客様に「何年持つのかなどをちゃんと数値化して論拠を提示してください」と言われることがあって。積み上げてきたものを信じていただければと思うんですが、これからはそういうご要望に、論理的に対応できる新しいタイプの人材も必要なのかなぁと考えたりします。

長山:私達も、「この広告を掲出したら、どのくらいのお客様が反応しますか」ってよく聞かれます。広告の場合、サイトのクリック数や、見ている時間などの数値はとれますけど、技術的なことを知っていてかつ客観的にものが見える、コミュニケーション力が高い人は、やっぱり必要です。どこの業界でも求められている人材かもしれませんね。