みらいデザインミーティング#002 経師1

経師、大入祥平さんと話してみた。

経師、大入祥平さんと話してみた。

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奈良時代から継承されてきた伝統技術で、和本の装丁、文化財の修復、保存や複製などを手がける経師。今回は京都の経師、「株式会社 大入」のプロデューサー、大入祥平さんに、たき工房のアートディレクター、長山大樹が会いに出かけました。東京での展示商談会をきっかけに、保存に特化したフォトアルバム「八千代綴り」を共同開発した二人。これからの時代に息づく産業の姿、デザインの価値とは・・・。

生活に必要なものを作り、
使ってもらってこそ産業

長山:大入さんの作られたもので僕が最初に拝見してすごいなぁと思ったのは、帙(ちつ=本を保護するためのケース)でした。共同プロジェクトの参考資料として見せていただいたんですが、ほんとに歪みもなく、中の本にぴったりですよね。

大入:ありがとうございます。日本の気候風土にも合うし、本にしっかり寄り添ってくれます。実際、これに包まれた本がきれいに残っているというのが、保存容器として優れているっていう何よりの証拠や思うんです。

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長山:今は大学図書館や豪華な装丁本を扱う出版社のお仕事が多いそうですね。

大入:はい、でもこれからはもっと顧客の間口を広げなければと思っています。とくに図書館や美術館のようなB to Bだけではなくて、B to Cの仕事になるような新規顧客を開拓したい。一般家庭で使われるものを作って発信したいですね。懐古主義というか、珍しくて貴重だからと保護されるのではなく、必要とされるものを考えて、作って、使ってもらうのが産業だと思うんです。

長山:東京での展示商談会で、たき工房に声をかけてくれたのも、そんな思いがあったからですか?

大入:そうなんです。それにはお客様の需要をどう掘り起こして、買いたい!っていう気持ちになっていただけるかということですよね。でも、今の人が喜ぶ形にアレンジするには、やっぱりデザインの力が必要なんじゃないかなと。そんな気持ちで展示商談会に行ったら、たき工房さんが出展されていて、伝統産業に関わる方々と組むような活動をしているってお聞きして。広告を制作してはいるけれども、自分たちのクレジットが載るような仕事もしたいと。・・・っていうことは、「もしかして求めるものが一致してる?」って。

長山:たき工房に見本品を持って来てくださったんですよね。製品にもすごく感動しましたし、新しいチャレンジをしたいっていう熱意も感じました。

大入:何か作っていこう!っていう時間って楽しいですよね。やがて待ち構えているであろう、いろいろなことへの覚悟もかためつつ(笑)。

長山:フォトアルバムの「八千代綴り」を作ろうということになりましたけれど、いざ始まってみるといろいろありましたよね。独特な結び方などお作法的なものがたくさんあるので、僕らからするとどこまで崩していいのかわからないし、何かを5mmずらしただけで不都合が出てきちゃうし。都度、こうしてみたいっていう提案を持ち帰って職人さんにきいてもらって。

大入:昔からの積み重ねで、ちょうどいいバランスに行き着いたものなので、それがちょっと変わるだけで崩れちゃうんですね。でも長山さんにお願いして何よりよかったのは、やはりうちだけではぜったい思いつかないようなデザインでした。そこを脱却させてもらえたのは、すごく大きなことでした。

長山:逆に、大入さんにとっては当たり前のものが、僕達にはかえって斬新、というのもありましたよ。発見もたくさんありました。紙やその使い方に対する知識がほんとに豊かで。

大入:知識が縛りになっちゃうこともありますけどね。でもそこを乗り越えることこそが大切だと思っていました。スムーズにいかないっていうことは、他が真似しにくいっていうこと。それが今、証明されているんだ、ということでもありますからね。

長山:たしかに乗り越えることが今回の共同開発の意味でもあったと思います。単なる発注ではなく、対等に新しい何かを探るところから一緒にやっていく。しかも違う分野の人、京都ですごいものをつくってきた方達とゼロから一緒にモノを生み出すっていうのも貴重な機会でした。

大入:ビジネスの面でもすごく勉強になりました。長山さんたちは日本の広告の最先端のお仕事をされてるじゃないですか。SNSを使っている若い人にどう響くのかもリアルタイムで把握している。そういう仕事ぶりを目の当たりにできたことが大きくて。今の人達は、自分がいいと思うものじゃなくて、人から褒められるものを選ぶ傾向にあるっていうのも新鮮な視点でした。あと、私達が持っているプロモーションの手立ては限られてしまっているので、動画という形で発信できたのはほんとにありがたいことでした。80年代、90年代って、伝統の世界は「謎めいている」方が重厚感があって良かった。でも今は情報開示、情報演出が大切だと思うんです。そういうところでも手腕をふるっていただいて、感謝しています。