みらいデザインミーティング#001 花火師1






花火師 加藤克典さんと話してみた。

今回、花火師の加藤克典さんに会いに出かけたのは、「いろいろな問題に出会い、現場を観、話を聞き、つくって壊してを繰り返せる今の時期を大切にしたい」 と語るたき工房のクリエイティブディレクター、藤井賢二。
ものづくりにこめられた思いや悩み。変わっていく時代の波の中で、模索する 2 人が見出した共通点とは・・・。

花火は長い歴史の中で、みんなに
育てられてきたエンターテインメント。

藤井:日本人って花火が大好きですよね。何がそこまで人の心をとらえるんでしょうか。

加藤:僕は、老若男女みんなが楽しめること、大勢が同時に楽しめること、それから非日常性だと思っています。上空に打ち上がることで、何気なく過ごしている場所が、突然変わる。その根元は音と光の力ですけど。

藤井:たしかに「花火が上がる」=「特別な事」、「夏の夜の花火」=「楽しい夏休み」という良いイメージが小さい時から結びついていますよね。

加藤:あと、海外では花火に長い時間をかけることはありませんが、日本の花火大会は90 分とか 120 分とかかけて「花火と一緒に時間を過ごす」んですよね。小さい時おばあちゃんに手をひかれて見て、その時間ごと思い出に残る、みたいな・・・。

藤井:長い歴史の中で、みんなに育てられてきたエンターテインメントと言えるかもしれませんね。三河には花火屋さんが多いと聞いたんですが、今いくつくらいあるんですか。

加藤:打ち上げの製造業者さんは愛知県に 4 件あります。でも実は、かなり前から海外からの製品に押されています。僕たちの仕事は、花火の製造と花火大会の運営なんですけど、最近は輸入した花火を準備して、大会の運営だけしますっていう業者さんも増えてきました。

藤井:海外の花火の方が安いから、低コストで多くの花火が打ち上げられるということですね。

加藤:そうです。質は僕たちの製造している花火の方が優れていますが、より多く上げてほしいというニーズには応えられるわけです。

藤井:加藤煙火さんでは年間いくつくらいの花火大会を請け負っているんですか。

加藤:大会を丸ごと任せていただける場合と、部分的な演出だけ頼まれる場合を合わせると、50くらいです。現在、僕たちに任せてくださっているお客様には、打ち上げ数だけではないところに価値を見出していただいていますが、それでもこれからのことは考えていかないといけないと思っています。日本製の1玉よりも海外製品2玉の方をお客様が喜ぶのであれば、海外製品2玉を打ち上げる方が正しいと僕は思うんです。でも、自社製品とアイデアの組み合わせで、打ち上げ数よりも圧倒的に勝る感動を届けることができます。それをお客様が花火を打ち上げる前に判断できるように、花火の打ち上げ数ではない部分の価値基準をつくる方法を模索しているところです。

藤井:「優れたアイデアや技術にお金を払う」っていう価値観がもっと定着していくといいですよね。

加藤:たとえば火薬の配合ひとつとっても、毎年安定したものを供給するには研究が必要だし、音楽と花火を合わせるのもすごく時間のいる作業なんです。でもそういうところにお金をかけるという考え方が根付いていないというのはたしかにありますね。自分たちのやっていることの価値がちゃんと 認めてもらえるように、社会的な価値観を少しずつでも変えていきたいと思っています。

藤井:そこは僕たちの世界とも共通した悩みかもしれないです。ポスターを1枚つくるのに、「印刷する機械を動かすからいくらかかります」っていうことは理解されるけれど、「これを考えるのにこれだけ時間かかりましたからこれだけください」って言っても、「それはそちらの都合でしょう」って言う人もいる・・・。