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アートディレクター・デザイナー
工藤北斗

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はじめまして。たき工房のグラフィックデザイナー、工藤です。今回は、グラフィックデザイナーの仕事とその向き合い方について、ご紹介させていただければと思います。今後グラフィックデザイナーと一緒に仕事をしようと思っている方、これからグラフィックデザイナーを目指そうと思っている方の参考になれば幸いです。

工藤北斗 blog

 

グラフィックデザイナーとは

グラフィックデザイナーとは、一口にいってしまえば印刷物のデザインを担当するクリエイターのことです。代表的なものでいえば、電車の中吊りや駅に貼ってあるポスター、商品パッケージやチラシなど。どうすれば見る人の心を揺さぶることができるか。それを考え、デザインに落とし込むのが主な役割ですね。

また印刷物をメインの領域とはしていますが、ホームページのようなWebのデザインを担当することもあります。さすがに動画やアニメーションのような動きのあるものは専門分野ではありませんが、一枚の紙と見なせるようなWeb上のページであれば、グラフィックデザイナーはその力を遺憾なく発揮することができるでしょう。

グラフィックデザイナーという仕事を語る上で欠かせない前提条件が、私たちはアーティストではない、ということです。グラフィックデザイナーの仕事には、基本的には必ず依頼をいただくクライアントがおり、またそのクライアントが想いや情報を届けたいエンドユーザーが存在します。その人たちが何を伝えたいのか、エンドユーザーに何を感じてもらいたいのか。それこそがグラフィックデザイナーのアイデアの源泉であり、アーティストのように自らの想いや感情を作品に乗せることを目的とはしません。

アーティストとは異なる、グラフィックデザイナーの仕事

突拍子もないアイデアや先進性こそが武器と思われがちなグラフィックデザイナーの仕事ですが、実はそうではありません。お客様の真なる思いを引き出すコミュニケーション能力や、社会のトレンドやニーズを敏感に察知するマーケティング能力、そして数ある情報をもとに最善と思われる訴求方法を考える論理的な思考力などが問われる仕事なのです。

 

以前、カルビー株式会社様の案件で、期間限定のポテトチップス「ヤミーポテト」という商品のパッケージ制作を行わせていただいたことがあります。その際には、ターゲットとしている購買層はどんな人たちをイメージしているのか、過去の実績が好調だったデザインはどういったものだったか、販売される店舗はどこか、といった情報を細かく細かくヒアリングし、それをデザインに落とし込みました。

パッケージ制作の場合、駅などのポスターなどに比べると反響の有無がより明確です。売れ行きが好調であれば当然うれしいものですし、TwitterやInstagramなどのSNSで「パッケージがかわいい」などと評価してもらえたりすると、自分の仕事がしっかりと社会に届いているんだということが実感できますね。

blog ヤミーポレト

カルビー株式会社様、期間限定商品「ヤミーポテト」

 

エンドユーザー目線を仕事に活かした事例でいえば、アーティスト舘鼻則孝さんの100ページにも及ぶ作品集を制作したときが印象深いですね。舘鼻さんが持つ独自の世界観を維持しつつ、ユーザーにとっても見やすい作品集とするために、気を遣って制作しました。

デザインをする側からすれば、ページ数が多くなればなるほど色々なデザインを試せるわけですし、そうした変化を楽しんでもらいたいという思いも出てくるものです。しかし読む側に立って考えれば、毎ページ異なるデザインにしてしまうと、ページをめくるごとに読み方や見方をリセットしなければならず、相当体力を使わせてしまうことにもなります。もちろん、体力を使って読んでもらおうとするケースや、体力を使って読みたいというユーザーからのニーズも確かに存在するため、必ずしも読みやすさを重視することが正解ではありません。しかし本作では、舘鼻さんとも相談した結果、ある程度紙面をフォーマット化し、写真や文章の配置をルール化することで、統一されたデザインになるよう制作させていただきました。他にも、展覧会のガイドやコミュニケーションツールなどの制作も担当しています。

展覧会コミュニケーションツール

アーティスト舘鼻則孝さんの展覧会コミュニケーションツールのデザインを担当

 

アーティストとして、自分ならではのアイデアを形に

冒頭で、グラフィックデザイナーはアーティストとは違う、自分ではなくクライアントの思いを形にすることが使命、ということをお伝えさせていただきましたが、だからと言ってグラフィックデザイナーにアーティスト気質が無いかというと、決してそんなことはありません。むしろ、現職で働いているグラフィックデザイナーの多くは、アーティスト的な思考でスキルを磨いてきているのではないでしょうか。たき工房では、そうしたアーティストとしての仕事にチャレンジさせてもらえる機会もあります。

その一つが、たき工房の採用パンフレットの制作です。一般的に採用パンフレットといえば、社名をしっかりと乗せ、かっちりとした印象で制作されることが多いと思いますが、デザイナー募集を主としていたこともあり、かなり自由度高く制作をしました。たくさんのパンフレットが並んでいても、ひときわ目立つ存在となれるよう、紙にもこだわり、見る角度によって色味が変わるキラキラとしたエフェクトも入れています。もちろん、最低限必要な情報というのは入れていますが、「目立つ」ということを軸に、自分を含め制作チームで色々なアイデアを形にできたのは面白い経験でしたね。

たき工房の採用パンフレット

たき工房の採用パンフレット

また厳密には仕事ではない(クライアントワークではない)のですが、雑誌『ブレーン』の見開きページのアートデザインを制作もさせていただきました。クリエイター向けの専門誌に、自身の作品を載せることができるなんて、アーティスト冥利に尽きる経験と言えますね。「たき工房のグラフィックデザイナーとして恥ずかしくないものを」という思いから、最初はなかなか手が進まなかったのですが、敢えてそうした肩書きを一旦忘れることで、自由に自分を表現することができたと思います。世の中にはこんな表現ができるグラフィックデザイナーがいるんだぞ、ということを示すことができた、私にとっても思い出深い経験です。

雑誌『ブレーン』の見開きページを使ったアートデザイン

雑誌『ブレーン』の見開きページを使ったアートデザイン

 

お客様と一緒に、価値を創り上げる

グラフィックデザイナーの仕事やその向き合い方について、私の考え、思いを中心にお話しさせていただきました。グラフィックデザイナーは、印刷物のデザインをはじめとして、さまざまなメディアに対応することができる職業です。その領域は皆さまが思っている以上に広いものです。何かを綺麗に作りたいと思った時は、まずはお気軽に声をかけて頂きたいですね。「こういう情報がないとデザインはできない」などと突き放すようなことはなく、エンドユーザーに届けたい『思い』も含めて、一緒に探していければうれしいです。

またこれからグラフィックデザイナーを目指す方についても、たき工房であればクライアントワークを中心にしつつ、自分自身を表現する機会も持つことも不可能ではありません。私たちと一緒に、より良いデザインを世の中に提供していきましょう。